ブラック企業認定を回避する労基対策
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高い離職率と長時間労働、残業代未払いが「ブラック企業」の要因
残業代の未払いや長時間労働、パワハラ、セクハラ、ひいては過労死といったキーワードが出てくるなど、「ブラック企業」が社会問題化しています。しかし、どのような企業が「ブラック企業」といわれるのか、現在のところ法的な基準はありません。
昨年、厚生労働省が、労働相談の内容や離職率の高さなどの情報をもとに選んだ全国5111の企業や事業所に対しての監督結果によると、全体の82%にあたる4198の企業・事業所で長時間労働や残業代未払いなどの法令違反があり「是正勧告をした」とのことです。
採用した側が「社員を育てる」意識を持つことが大切
企業側としては、「ブラック企業」といわれる不名誉は何としても避けたいところでしょう。どのような対策を立てれば良いのか検討してみます。
「ブラック企業」の典型は、多くの新卒を採用し、その若者たちに理不尽な仕事をさせ、それに堪えられなくなった者が離職するという形です。新卒者に対して実現困難な目標を設定させ、達成できないと厳しく叱責して精神的に追い込む。このような企業は、経営者のモラルも問われます。新卒者を雇用したのであれば、「その社員を育てよう」という意思を持つべきです。もし育てられないのであれば、その新入社員が「社員として失格」なのではなく「育てられないあなたが経営者として失格」。それくらいの気概で臨むべきです。
また、多くの離職者は、賃金以外の退職理由に、パワハラ・セクハラを挙げています。どういったことが問題になるのかを企業側がきちんと調べておく必要があるでしょう。
未払いの残業代請求の時効は2年、裁判では付加金が付くことも
次に、長時間労働を避ける方法ですが、これはおそらく残業代の未払いと密接に関係しているので、あわせて考えてみましょう。
仮に、長時間の労働を強いられたとしても、残業代を支払っていれば、労働者からのクレームはかなり減らすことができるはず。逆に言えば、長時間労働をさせているのに、それに見合う賃金を支払っていないから、監督署に駆け込まれるのです。
では、なぜ企業は残業代を支払わないのか。大きく3つの理由があると思います。1つは、経済的余裕がない。2つ目は、払わなくても良いと思っている。最後は、払う意思がない。
まず、「経済的余裕」という面から見てみます。そもそも、残業するほど仕事があるのなら「支払う余裕がない」というのは、おかしいことです。次に、「払わなくても良い」と思っているケース。「ウチはきちんと払っている」「正社員だから少々の残業は当たり前」という考え方が原因になっていることもあります。「1日1時間残ったくらいで残業代などと言うな」はアウトです。残業することについても、いわゆる「36協定(労働基準法36条に基づく労使協定)」が必要なことは当然ですが、協定があるからといって残業代がゼロになることはありません。
最後に「払う意思がない」。これは論外です。未払い残業代の請求時効は2年で、労働者は退職しても請求できます。実際に、退職した7人が集まって請求し裁判に。裁判では「付加金」という罰金のようなものが付き、請求額の最高2倍の金額になることもあります。
変形労働時間制の活用で残業代を減らすことも可能
残業代を減らす方法は、ただ一つ。時間を減らすことです。1日8時間、週40時間の決まりがあるので、これを超える部分は残業代の対象となります。週40時間の縛りは動かせませんが、1日8時間の縛りは「変形労働時間制」を採用することにより、「ある日は10時間労働をさせても時間外にならない」とすることができます。
変形労働時間制には、1カ月単位と1年単位があります。監督署のホームページなどを参考に、自分の会社に最適な変形労働を採用することをオススメします。監督署はさまざまな相談に乗ってくれるので活用しましょう。また、単純労働の部分については、週30時間未満のパートを活用すれば、残業代以外に社会保険料の節約にもなります。
「ブラック企業」に効く特効薬は存在しません。しかし、労働基準法の規定による労働時間の管理と、残業などの賃金をきちんと支払っておけばトラブルは回避できます。新入社員などの退職が目立ってきたら、その離職理由をよく調べましょう。社長が注意していても、「現場の管理職がパワハラをしていた」ということもあり得ます。一度、社内を見回してみてください。
労基署・年金事務所などの調査対策の専門家
廣岡保彦さん(廣岡社会保険労務士事務所)
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