被災3県の水産加工業者に必要な支援
震災で深刻なダメージを受けた被災3県の水産加工業者
東日本大震災は、被災3県(岩手県・宮城県・福島県)の沿岸部の水産加工業者に深刻なダメージを与えました。水産庁の発表によれば、宮城県においては沿岸部の86パーセントの加工場が被災し、そのうち85%もの加工場が全壊認定を受けたとされています。
遅ればせながらとはいえ、被災地の水産加工業者の加工場の生産能力は回復しつつあります。これには中小企業庁の「中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業」(いわゆる「グループ補助金」)と、株式会社東日本大震災復興支援機構等が一定の役割を果たしているように感じています。
震災前のレベルまで売上を回復できた業者は全体の28%
しかし、依然として水産加工業者の売上は東日本大震災前には遠く及ばず、震災前のレベルまで売上を回復できた業者は全体の28%にとどまります。その原因は、①販路喪失、②風評被害、③従業員不足の3つではないかと思っています。
残念ながら被災地の復興に関する行政の取り組みは後手に回りました。震災後の土地利用計画の策定が遅れたため、加工場の再建は先送りされ、グループ補助金の支給も必ずしも速やかに行われなかったこともあり、結果的に競合社がそれまでの被災地の水産工業者の販路に入ってくることとなりました。もちろん、原発問題等の風評被害も販路が失われた大きな理由の一つです。また、被災地においては人が減少したこともあり、賃金水準が上がり、被災企業が以前と同様の賃金にて求人を出したとしても応募して来る人はかなり少ないともいわれています。
このように「生産設備」は復旧しつつあるものの、「働く人」を十分に確保できないため生産能力を十分生かせず、また、生産体制を作ったとしても販路を確保できずに売上を作れないというのが、被災地の水産加工業者の陥っているジレンマなのではないかと思います。
一定の条件下での雇用についての助成金の検討等を
売上回復のための処方箋は裏を返せば、上記の問題点の解決ということになりますが、どれも難しい問題です。被災企業といえども、競合社との競争に関しての支援は考えにくいと思います。しかし、行政自体が積極的に被災企業の商品を購入し、消費したり、水産加工業者と買い手との新たなマッチングの機会を作っていくということはなされて良いと思います。また、原発問題等に関する風評被害に関しては、水産物についての放射性物質に関する調査結果等の公開により、風評自体を消滅させる努力をするほかありません。
そして、人件費の問題は最終的には運転資金に直結する問題です。個人的には期間限定であっても、一定の条件下での雇用についての助成金を検討する余地があるのではないかと思っています。
企業再生・企業法務のプロ
岩渕健彦さん(エール法律事務所)