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6万人が反対署名「介護法案」の問題点

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反対する団体が6万人を超える反対署名を厚労省に提出

6万人が反対署名「介護法案」の問題点

政府与党が今国会中の成立を目指している介護法案に対し、法案に反対する団体が6万人を超える反対署名を厚生労働省に提出したという報道がありました。

この介護法案は、正式名称を、「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案」といいます。とても長い名称ですが、その名のとおり、医療法や介護保険法など、医療や介護に関する関係法律をまとめて改正してしまおう、という法案です。

改正対象の法律は数も多く、弁護士である私が厚労省の関連ページを見ても、正直なところ、複雑で非常に理解が難しいです。実際、野党や法案の関連団体などは、医療と介護は本来別の法案としてそれぞれ十分に審議するべきではないかと、今回の些か乱暴な法案内容に対する批判を強めています。

介護・医療における法改正の背景に国の厳しい財政事情

今回の法案ではどのような法改正が予定されているでしょうか。介護分野では、相対的に介護が必要な度合が低い利用者に対して行うデイサービスや訪問介護事業の主体を国から市町村に移すとともに、特別養護老人ホーム(特養)の入所者を原則として要介護度の重い利用者に限定します。また、一定の所得以上の場合の利用者負担額を、現在の1割から2割に引き上げています。これらの改正内容からは、高齢化に伴う国民医療費の増加を受けた国の厳しい財政事情が伺えます。

他方、医療分野では、医療機関が病床機能を都道府県に報告する制度を導入したことが重要です。つまり、それぞれの病院の特徴を行政が把握することにより、医療機関の効率的再編につなげる狙いです。これも、国の財政事情を反映したものであると同時に、背景には医師不足の問題もありそうです。つまり、日本は諸外国に比べて病院のベッドの数(病床数)自体は少なくありませんが、医師の数が不足しているために、結局、国民が医療を受けるための医療資源は限られています。そのため、病院機能の再編により、限られた医療資源を効率的に分配することで、医療資源不足に対処しようという考えがあるのだと思います。

制度変更によりサービス低下が懸念される部分への手当は?

介護、医療いずれの改正についても、高齢化社会における介護費、医療費の削減の視点や、限られた医療・介護資源の効率的な分配の視点があり、現在の日本のお国事情を考えれば、法改正が必要な問題であることは間違いありません。

しかし、こうした改正では、ともすればコストカットばかりに目が行き、介護・医療サービスの質や量の低下に対する配慮がおざなりにされがちです。例えば、政府は、今回の介護関連法の改正に伴うデイサービスや訪問介護のサービス低下の懸念に対しては、地域のNPOやボランティアの活用を想定しているようですが、民間活力を生かすための十分な制度整備を併せて行わない限りは、単に、行政が民間に責任を押し付けているだけになってしまいます。

経済が成熟期にあり、急速な高齢化が進む我が国では、限られた資金、資源の中での持続可能な制度設計は不可欠ですが、今回の法案が、国民の負担増や給付の削減だけでなく、制度変更によりサービス低下が懸念される部分の手当まで十分に考えられたものであるか、慎重に議論される必要があります。その意味では、前述の野党や関連団体の批判はもっともだと思います。

交通事故と債務問題のプロ

永野海さん(中央法律事務所)

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