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盛んな「人事交流」の重要な注意点

組織の硬直化を防ぎ、新しい文化や発想が芽生え根付く可能性

盛んな「人事交流」の重要な注意点

国、自治体、民間、それぞれの垣根を取り払い、職員や社員を派遣し合って情報交換や交流に役立てる「人事交流」の話題を、最近よく耳にします。労務の視点から、人事交流を客観的に考えてみます。

まずは自治体の場合。個々の職員は、自分の勤める自治体の魅力や長所には意外と気が付いていないものです。それが、他所から来た人の目線を知ることで、新たな魅力を発見することが想定されます。また、両者が元の職場に戻った時には、派遣先から持ち帰った新しい文化や発想が地域に芽生え、根付くことも考えられます。

次に民間同士の交流を考えてみましょう。同業他社間での交流か、取引先企業間での交流というのが主なケースでしょう。一方、全くの異業種だけれども同職種で派遣し合うというケースもありそうです。いずれの場合も自治体間交流と同じで、自社内では気付かなかった魅力なり長所なりを発見できる可能性がありますし、お互いに新しい文化や発想を持ち帰ることもあるでしょう。組織を停滞、硬直化させないためにも、人事交流は大変有効です。

在籍出向の場合、出向元と出向先が使用者としての責任を負う

しかし、人事交流を行う上で注意したい点もあります。以下に、要素をあげてみます。

移籍出向であれば、相手方に籍が移るので、使用者として責任を負うのは出向先です。一方、在籍出向の場合、出向労働者については、出向元と出向先の両方と労働契約関係が存在する形となります。ですから、権限と責任に応じて、出向元と出向先が使用者としての責任を負うことになります。そこで、「労働条件」「賃金」「有給休暇」「社会保険料の負担」などをどうするのか?という問題を無視するわけにはいきません。場合によっては「出向先が不景気になった時はどうなるの?」というケース、あるいは逆のケースもあるでしょう。これらを事前にきちんと決めておく必要があります。

出向してきた人に業務内容を明示し、裁量権を明確に

人事交流を受け入れる職場は、「お客さん」を迎えるわけではありません。同職種で交換したとしても、職場が違えば職務内容も業務手順も意外と異なるものです。出向してきた人が戸惑うことのないようにしっかりと業務内容を明示しましょう。

ただし、「お客さん」ではないとはいえ、移籍出向でない限り、期限が来たら元の職場に戻るのです。しかし、労働者として受け入れている以上、会議等に出席したり、判断や決定を求められる場面も出てくるでしょう。あらかじめ裁量権を明確に示しておかなければなりません。

機密保持に関する取り決めの徹底を

先日も、某社の関係先企業の元社員が機密情報を転職先の韓国企業に渡して逮捕されるという事件がありました。企業機密の保持に関する取り決め、SNS利用に関する取り決めはきちんとしておきましょう。

人事交流は、組織を活性化させたり、新しい視点をもたらしてくれたり、新しい文化を造るきっかけとなったりします。固定化していた価値観が変化する「パラダイムの転換」の機会として非常に有効です。一方で、受け入れ側の責任や業務、権限の明示をしておかないとトラブルの火種となりかねません。これらを踏まえて有効活用しましょう。

「人財」を育て企業の健全な存続を支援するプロ

佐藤憲彦さん(さとう社会保険労務士事務所)

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