大阪で制定要求「空襲被害援護法」
法律の制定を求める意見書、大阪府の田尻町議会で可決
第二次世界大戦の空襲被害者を救済する法律の制定を求める「『空襲被害者等援護法』(仮称)の早期成立を求める意見書」が、大阪府の田尻町議会で可決されたそうです。空襲で被害を受けた国民に対して特に被害を補償する法制度がないから、このような意見書が出たのでしょう。意見書が出た背景として、空襲被害者が、国に対して東京や大阪で訴訟を起こして被害救済を求めるも、棄却されているということがあります。
空襲被害者が国に損害賠償と謝罪を求めるも東京高裁は棄却
昭和20年の東京大空襲で傷害を受けたり、家族を亡くしたりした人々が、国に対して慰謝料等の損害賠償と謝罪を求めた訴訟で、東京高裁は、平成24年4月25日、請求棄却した一審と同様に控訴を棄却しています。この訴訟では、(1)国が平和条約(サンフランシスコ条約)で空襲被害者のアメリカ合衆国に対する損害賠償請求を放棄して被害者に外交上の保護を与えなかったことが「公務員の不法行為」(憲法17条)に該当するか、(2)空襲被害者に対して何らの救済・援護をしない立法上・行政上の不作為が特別犠牲を強いられない権利(憲法13条)・平和的生存権(憲法前文、13条、25条)・平等権(憲法14条)を侵害するか、が争われました。
(1)の外交保護義務違反の点については、平和条約19条(a)項で損害賠償請求権を相互に放棄したのは戦争を最終的に終了させ将来に向けて友好関係を築くという目的の達成のためにやむを得なかったものとして、義務違反を認めませんでした。 また、請求権放棄をする代わりに国内法での補償をしないことが違憲(憲法29条3項)となるかについては、補償するかどうかは国会の裁量的権限として否定しました。
(2)の立法不作為の点については、裁判所は、「戦後の立法により各種の援護措置を受けている旧軍人軍属等との間に不公平感を感じ、一般戦争被害者に対しても救援や援護を与えるのが国の責務である」との主張に心情的な理解を示しました。しかし、裁判所は、特別犠牲を強いられない権利・平和的生存権の侵害について否定しました。
軍人等への補償との不平等感についても被害者の主張は採用されず
また、空襲被害者は、民間戦争被害者に対する援護策が定められていた戦時災害保護法(昭和17年制定)が昭和21年に廃止されて援護制度が消滅した一方で、軍人軍属と遺族には手厚い援護がされている(平成22年までの累計支出は52兆円を超える。)ことや、軍人等への援護の対象を準軍属や民間戦争被害者にも拡大したことで沖縄地上戦の被害者の一部や空襲被害者だけを全く補償せずに取り残したことは、不合理的な不平等であると主張しました。しかし、裁判所は、軍人軍属などへの援護の拡大等についてはそれぞれ合理的な理由があるとして、被害者の主張を採用しませんでした。この判決についての空襲被害者の上告・上告受理申立を最高裁は棄却しています(平成25年5月8日)。大阪空襲の訴訟については、大阪地裁・大阪高裁で請求棄却されて、最高裁に上告中のようです。
政策的な判断が必要な問題なので、裁判所での最終的な補償の実現は困難だと思いますが、軍人等への補償との不平等感についての慰謝料等だけでも裁判所が認めても良かったように感じます。
中小企業をとりまく法的問題解決のプロ
林朋寛さん(北海道コンテンツ法律事務所)