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日本が沖ノ鳥島で護岸工事を行う理由

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「海の憲法」により設けられた「排他的経済水域(EEZ)」

日本が沖ノ鳥島で護岸工事を行う理由

海洋に関する国際的な基本ルールとして、1994年に発効した国連海洋法条約があります。いわゆる「海の憲法」です。この条約が定められるまでは、特定の国家の主権に属さずに各国が自由に航行できる海域の「公海」と、沿岸国の主権が及ぶ海域の「領海」という区分しかありませんでした。しかし、この条約によって、新たに「排他的経済水域(EEZ)」という海域、すなわち、沿岸国に、天然資源の開発等の経済的活動についての主権的権利と、人工島等の設置及び利用、海洋の科学的調査、海洋環境の保護及び保全に関する管轄権を認める海域が設けられました。その範囲については、「領海の外側において領海の基線から200海里(約370km)を超えない範囲で設定できるものと定められている」のみですから、あくまでも沿岸国の国内法で設定しておかなければ、当然にその国の「排他的経済水域」になるものではありません。実際に、我が国では「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」という国内法において設定されております。

このような「排他的経済水域」の性格上、これを設定した沿岸国に権利のある特定の事項以外については「公海」としての性格が維持されますので、他国は、その権利(経済的主権)を害さない限り、航行、上空飛行、海底電線・海底パイプライン敷設等の公海の自由を有することになります。したがって、他国の船舶が沿岸国の「排他的経済水域」に侵入しただけでだ捕されるということはなく、平穏に航行している限り、国際法上は何らの問題もありません。

「排他的経済水域」の問題は安全保障上も無視できない

近年、我が国の「排他的経済水域」に絡んで問題が生じているものの一つに、沖ノ鳥島があります。我が国は、沖ノ鳥島の周囲に「排他的経済水域」を設定し、そこに含まれる豊富な水産・鉱物資源の権益を確保していたものの、島自体が水没の危機に瀕しているため、我が国の政府は、これを防ぐべく長年にわたり多額の費用を注ぎ込んで護岸工事を行っております。なぜなら、国連海洋法条約121条3項が、「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」と定めているため、沖ノ鳥島が「島」ではなく同項のような「岩」になってしまった場合には、我が国がその周囲に設置した「排他的経済水域」が消滅してしまい、国益が損なわれるからです。

しかしながら、西太平洋への進出を企てる中国が、やがて沖ノ鳥島を単なる「岩」に過ぎないなどと主張して我が国の「排他的経済水域」に異議を述べるようになり、特に平成16年以降、沖ノ鳥島周辺の「排他的経済水域」内で、我が国の了解なく、海洋調査にとどまらない軍事的活動を行うようになったため、海洋安全保障上も極めて重要な問題として位置付けられるようになりました。

こうしたことから、「排他的経済水域」の問題は、もはや経済的な側面のみならず、安全保障上の側面も無視することができなくなってしまったということがいえるでしょう。

田沢剛

法的トラブル解決の専門家

弁護士

田沢剛さん(新横浜アーバン・クリエイト法律事務所)

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