「就業中に隠れて転職活動」は違反?
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転職市場、活況。よりよい労働環境を求めて人が増加
景気が回復基調にあり、転職市場も活況しているそうです。そんな中、よりよい労働環境を求めて転職を考える人も多いのではないでしょうか?ただ、転職活動をする上で注意しなければならない点もあります。
転職をする場合、そもそも転職活動自体に何か法的に問題はあるのでしょうか?この点については、憲法22条で職業選択の自由が定められていて、これは労働者と会社双方に妥当します(会社にとっては採用の自由)。つまり、労働者はそもそも会社を選ぶ権利が保障されているということです。また、期間の定めのない労働契約においては、労働者には辞職(退職)の自由がある(民法627条1項)ので、この自由と新たな会社との契約締結の自由を行使して、他企業へ移る(転職)することは自由です。よって、転職あるいは転職活動自体に何ら法的な問題はありません。
「就業中」は誠実に労働する義務があり、職務への専念が必要
ただし、転職自体に法的な問題点はないにしても、「就業中」に「隠れて」転職活動をする場合は事情が異なります。「就業中」に関していえば、労働者と会社の間には労働契約上の義務として、誠実に労働する義務があり、職務に専念する必要があります。転職活動をすることによって、日常の業務に支障を及ぼすようなことになると、この義務に違反することになります。例えば、所定労働時間内に転職活動のため電話をかけたり、残業命令が出たにも関わらず、転職活動のために「残業できない・しない」というのは、この義務に違反するでしょう。こうした行為があれば、就業規則の規定(例えば、「職務怠慢で業務に支障が及ぶとき」など)によって、懲戒処分される可能性があります。
転職活動に会社の備品を使うと懲戒処分の可能性が高まる
また、転職活動のために「会社の電話を使った」「会社のパソコンで転職サイトを閲覧していた」などが発覚した場合は、懲戒処分の対象とされる可能性が高まります。あくまで会社の備品は、その会社の職務を遂行するために従業員に貸与されているものであって、私的に利用することは許されない場合がほとんどです。会社は業務上の理由から従業員に貸与したパソコンのログなどを調査する権利を持っているため(最近では、就業規則等に書かれていることも多い)、従業員は「見られている」ということを意識しておくべきでしょう。
転職活動を理由とした有給休暇の利用は問題ない
ちなみに、有給休暇を利用して転職活動をする場合は何か違反となるのでしょうか?有給休暇を利用する際、会社に理由を説明する義務はありません。また、有給をどのように利用しようとも原則自由です。そのため、転職活動を理由とした有給休暇の利用は何ら問題ないでしょう。ただ、いざ転職活動のために有給を取ろうとしても「会社にバレたら嫌だ」「同僚に後ろめたい」といったこともあるでしょう。そういう気持ちになる場合には、思い切って転職活動のことを上司に伝えるとか、退職後に転職活動をする、などした方が良いかもしれません。
最後に、この機会に会社の就業規則を見ておくことをおすすめします。どのような服務規律があるか、どんな場合に懲戒処分がなされるかを確認しておくと良いでしょう。
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