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専業主婦の「年金3号」見直しの背景

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年収が130万円未満の要件を満たすと第3号被保険者に

専業主婦の「年金3号」見直しの背景

日本の公的年金制度は国民皆年金であり、国民は何らかの年金制度に加入しなければなりません。20歳から60歳までの自営業者等は第1号被保険者、会社員・公務員は第2号被保険者、会社員・公務員に扶養されている20歳から60歳までの配偶者は第3号被保険者と呼ばれています。

年収が130万円未満の要件を満たすと第3号被保険者となり、配偶者自身の健康保険料と国民年金保険料を納める義務がなくなります。勘違いされやすいところですが、配偶者の給料から第3号被保険者の分の保険料も天引きされているわけではなく、厚生年金であれば、その制度全体から拠出されています。これは、昭和61年4月から始まった制度であり、それまでは「専業主婦は国民年金に加入してもしなくても良い」という任意加入の時代でした。そうなると、任意加入していない場合に障害年金を受給できず、離婚した場合に自分名義の年金がないことが問題となっていました。

第3号被保険者制度は、離婚した場合や配偶者が退職した場合、国民年金の第1号被保険者への変更の手続きが必要ですが、それを忘れていても記録上はそのまま第3号被保険者となっているという記録不整合問題から、第3号被保険者の制度の見直しが議論されるようになりました。

女性の就労機会を拡大し、公平な年金制度の実現へ

また、問題点として大きいのが、自営業者の妻や独身の女性に不公平感が生じていることです。例えば、60歳までの40年間ずっと第3号被保険者であれば、全く保険料を負担せずに満額の基礎年金を受け取ることができます。しかし、第1号被保険者は必ず保険料を負担しなければ基礎年金に反映しません。社会保険は、負担に応じて給付を受けるものなので、その原則に反することになります。さらに、パートで年収を130万円未満に抑えておくと、第3号被保険者のままになり負担がなくなるので有利になります。そうなると、130万円未満に抑えるようになり、女性の就労意欲をそぐことになってしまいます。

安倍首相が、女性の就労拡大を抑制している現在の税・社会保障制度の見直しと、働き方に中立的な制度構築について検討を関係閣僚に指示した背景には、「働かない方が有利な仕組み」である配偶者控除や第3号被保険者制度が念頭にあるので、今後は縮小されることが見込まれます。実施されれば専業主婦のいる家庭にとっては負担が大きくなり、消費税率の引き上げと重なるために簡単にはいかないでしょう。しかし、年金制度は中立で、公平感のあるものでなければならないので、誰もが納得できるように前に進めていくことが必要です。

リスク対応型就業規則作成と障害年金請求の専門家

松本明親さん(社会保険労務士 松本事務所)

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