内定辞退で叱責、強要罪の可能性
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一部の企業において内定辞退者に嫌がらせをするケースも
3月に入り、平成27年春に卒業する大学3年生の就職活動が本格化しています。景気回復を背景に、「学生優位=売り手市場」の就職戦線との見方もあり、複数の企業から内定をもらって、内定辞退をする学生も増えると見られています。
一部の企業においては、コストと時間をかけて採用にこぎつけた人材を引きとめようとして「内定を辞退した場合には、損害賠償を請求する」「非常識だ、迷惑をかけるな」などと圧力をかけたり、大学に押しかけたりするなどの嫌がらせをするケースもあるようです。
内定者に引き留めに応じる義務はなく、損害賠償義務も生じない
そもそも内定辞退をする学生には、企業に対する損害賠償義務が発生するのでしょうか。採用内定の法的性質については、最高裁の判例において「始期付解約留保権付労働契約」と解されています(昭和54年7月20日判決)。
すなわち、(新卒者の場合)大学卒業直後を就労開始の始期とし、就労開始までの間に取消事由が存する場合に限り、企業側に解約留保権の存する労働契約です。そして正社員になるという場合は、契約期間の定めのない労働契約となります。このような労働契約において、内定者側は「いつでも特段の理由を必要とせずに、内定を辞退することができる」とされています(民法627条1項)。したがって、内定者は企業側の引き留めに応じる義務はありません。義務違反が存在しないことから、内定者には企業に対する損害賠償義務も生じないのが原則です。
度をすぎれば刑事事件として「強要罪」が成立する場合も
内定辞退者を引きとめるための企業の行動は、度をすぎれば不法行為を構成し、逆に内定辞退者から損害賠償を請求される可能性もあります(民法709条)。それだけではなく、刑事事件として「強要罪」(刑法223条)が成立する場合も考えられます。
また、インターネットの掲示板やSNSが普及したことから、悪質な引き留め行為を受けた内定辞退者から書き込みをされて、企業の評価が失墜する可能性もあります。企業側にも節度を保った対応が求められるといえるでしょう。
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