従業員のSNS利用、企業は規制すべきか?
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SNS全盛の今、利用禁止には異論も
プロ野球の読売ジャイアンツが新人選手に対し、ツイッターなどのSNSの利用を禁止したことが話題になっています。SNSの利用までを禁止するという対応には、異議を唱える人もいますが、これだけ情報流出や炎上騒動などが多発し、様々なリスクがあることを考えれば、やむを得ない対応なのかもしれません。
しかし、このようなSNSの利用を制限することがビジネス上の成長を阻害するようなことにもつながってしまうので、企業規模や業種、企業風土などを含めて、その規制の程度を考えていくべきでしょう。
従業員に対して、SNSの利用を完全禁止することはできない
現在のように、これだけSNSでトラブルが起きるなら、「プライベートでも一切利用禁止」という会社が出てきても不思議ではありません。しかしながら、一般の企業が従業員にSNSの利用を完全に禁止することができるのかというと、それはできません。企業が従業員のプライベートまでを監視して、表現の自由を奪うようなことは労働基準法等の法律の観点からもできないのです。また、従業員のSNS利用を届出制にすることも、企業による行き過ぎた私的生活への干渉とみなされる恐れがあるので、注意しなければなりません。
業務上での利用を制限するのは問題ありませんが、企業はプライベートにまで介入して利用禁止することまではできないため、SNSを利用する上での規制を設け、就業規則に規定し、ガイドラインを作成するとともに、それを理解させるための従業員教育が重要になってくるわけです。
規制を強化するのではなく、上手に使いこなしてもらうように
SNSの利用に関して厳しい規制をかけたとしても、それが単なる社内の朝礼や会議で担当部署の人や上長から軽く話したくらいでは、あまり効果はありません。また、規制をかければかけるほど隠れてやる人はどこにでもいるもので、「自分は大丈夫」と思っている人が問題を起こしたりするものです。
それでは、SNSの利用に関して、就業規則に別途規定し、細かくガイドラインをつくれば良いかというと、それだけでリスクを回避することはできません。実際に、具体的な書き込み内容の事例を含めて詳細に規定するとすれば、対象が広すぎて内容も膨大になってしまいます。誰も読まなくなってしまう恐れのあるガイドラインでは意味がありません。従業員が理解できる範囲のもので、求められる基本的な行動や会社のSNSに対する考え方を示すのが良いでしょう。あとは、事例なども含めて社員研修などを同時に行うことで、より実際の事例やトラブルになった原因を分析したり、問題の本質について一緒に考えたりする機会を設けることで意識を高めるようなものが理想的です。
現代において、従業員がSNSを利用することで得ることができる企業側のメリットはたくさんあります。規制をかけすぎれば企業間の競争に負けてしまいます。規制の強化ではなく、SNSというツールの特徴を理解し、上手に使いこなすことができるように奨励していくというスタンスが今後は求められるのではないでしょうか。
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