「危ない乗り物」自転車、罰金刑や高額の損害賠償も
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自転車は「車両」の一種。「酒酔い運転」は処罰の対象に
自転車は、私たちの生活に身近な存在であり、ガソリンも運転免許も要らない「エコで手軽な乗り物」です。子どもでも乗れるため、ついつい安易に考えられがちですが、あくまで「軽車両」に区分される「車両」の一種であり、道路交通法により厳しく規制されていることを忘れてはいけません。
小学校で「車は左、人は右」などと習いました。自転車は車ですから左側通行です。自転車が歩道を通行できるのは例外的な場合だけで、原則的には車道での「左側通行」を義務づけられています。昨年(2013年)12月1日から施行された「改正道路交通法」では、この点が明確化され、車道の端にある路側帯を通行する場合の「右側通行」が禁止されました。違反すると3月以下の懲役または5万円以下の罰金です。
また、車やバイクの飲酒運転が厳罰化されたことは、かなり周知されてきました。それでも飲酒運転に起因する痛ましい事故が後を絶ちません。それだけ根の深い問題でもあるわけですが、「自転車なら大丈夫」などと勘違いしている人はいないでしょうか。自転車だって「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」があてはまり、「酒酔い運転」は5年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
自転車の交通ルール違反やマナー違反が目立ち、厳格な検挙へ
これまで、自転車の交通違反はほとんど「お目こぼし」状態でした。自転車の交通違反までは警察の手が回らないのが実情だったのです。しかし、近年、交通事故全体の件数が減少する一方で、自転車の関連する事故が占める割合はずっと2割前後を保っています。また、自転車運転者の交通ルール違反やマナー違反が目立ち、悪質化とともに歩行者の命にかかわる違反や事故も増えてきました。
こうなると警察も傍若無人な自転車を放置するわけにはいきません。遮断踏切立入、信号無視(いずれも3月以下の懲役又は5万円以下の罰金)、ブレーキ不良運転(5万円以下の罰金)など、歩行者や他の車両に具体的な危険を生じさせる違反に対しては交通切符(いわゆる「赤キップ」)による検挙が厳格に行われるようになっています。
また、無灯火、二人乗り(いずれも5万円以下の罰金)、一時不停止(3月以下の懲役又は5万円以下の罰金)等に対しては、指導警告の強化で対応する方向性が公表されていますが、それに従わず違反行為を繰り返したりすると、容赦なく「赤キップ」による検挙が待っていますので、ご注意ください。
自動車事故に匹敵する損害賠償も。「危険な乗り物」との認識を
バイクや自動車については「交通反則通告制度」があり、軽微な交通違反については「青キップ」が切られ、「反則金」を納めることによって刑罰を受けずに済むシステムになっていますが、自転車にはこの制度の適用がありません。ですから自転車の交通違反で起訴されると、いとも簡単に罰金刑などに処せられてしまうのです。
さて、自転車事故の賠償責任も見逃せません。事故当時小学5年生だった少年の自転車が歩行者に衝突した事故をめぐる損害賠償訴訟で、2013年7月に神戸地裁が少年の母親に対し約9,500万円もの高額賠償を命じたことは記憶に新しいところです。最近の裁判例では、自動車事故に匹敵する高額の損害賠償を命じられるケースが増える傾向にあります。
もはや、自転車はエコで手軽な乗り物という意識は捨て、「危険な乗り物」であるとの認識を持つべき時代に入ったと言えるでしょう。たかが自転車などとあなどってはいけません。ひとたび事故の加害者になると、5,000万円~1億円の賠償を命じられる可能性だってあるのです。万が一に備え、自転車事故をカバーする賠償責任保険への加入も必要でしょう。
職人かたぎの法律のプロ
藤本尚道さん(「藤本尚道法律事務所」)
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