成長戦略関連法案で経済回復は定着するか?
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消費増税後、個人消費が経済のけん引役になるかは未知数
1月24日に召集された通常国会において、政府は成長戦略に関連する30数本の法案を提出するということです。与党が圧倒的多数なので、これらの法案はほぼ間違いなく成立するでしょうから、問題はその成立によってどんな社会がもたらされるかです。
安倍総理の経済対策「アベノミクス」では、日銀の異次元の金融緩和と震災からの復興や日本列島強靭化といったテーマに対する機動的な財政出動などで、市中に資金が回るようになり、国民の意識も明るいものになってきています。民間の消費も消費税増税前の駆け込み需要もあって上向きに推移していますが、多くの経済関係者は、4月の消費増税後の落ち込みは避けられないという予測をしていますので、個人消費が今後の我が国経済のけん引役になるかというと未知数です。
アベノミクスによる経済回復が定着するかは成長戦略が鍵
そう考えると、アベノミクスによる経済回復が定着するか否かは、三本目の矢である成長戦略が構造改革を促進して経済の足腰を強化することが本当にできるかにかかっているといえます。財政の累積赤字が膨大な金額に上っている我が国にとって、成長戦略に費やす財源や時間は多くありませんので、いかに効率的に民間に刺激を与え投資と開発を促進するかがカギになります。政府が決定した「産業競争力の強化に関する実行計画」も、当面3年間に実施される成長戦略関連の重点施策について実施期限や担当大臣を明示して、責任の所在とスケジュール感を持った計画にしている点は評価できます。
ただ、例えば、設備投資減税を行って企業のIT投資や生産性向上のための投資を後押しする政策も、財政出動によって企業の業績を後押ししている感は否めず、設備投資需要を呼び起こして産業構造改革を促進するという点で、ある程度の効果は期待できるものの財政健全化が遠のく懸念もないとはいえません。
外国人労働者の受け入れ条件を緩和する施策も必要な時期に
その意味で、私が期待している政策は、国が資金を出さなくても経済が上向くような施策です。藻谷浩介氏の「デフレの正体」では、人口減少社会が深刻化して消費人口が減少したことがデフレの原因であるという分析がなされていましたが、長年続いた我が国のデフレは消費人口の減少に加えて、消費マインドの冷え込みが原因であったと認識しています。
アベノミクスで消費マインドの方は幾分か上向いてきましたが、消費者の総数は今のままでは増えることはありません。その意味で、外国人労働者の受け入れ条件を緩和して労働力を補うとともに、これら外国人による国内の消費によって経済の活性化を加速するという施策も必要な時期に来ているのではないかと考えています。外国人の流入による治安の悪化や国民が就労の機会が奪われるという懸念は、EUの外国人排斥の動きを見ていると注意しなければならないところではありますが、産業の活力を取り戻すには東南アジア方面からの外国人労働者の受け入れは避けられないのではないかと考えています。
成長戦略関連法案にこのような施策に関するものがあるとの紹介はありませんので、その意味では、今回の中身も、これまで議論されてきた成長戦略の延長線上にあるとの印象は否めません。個人的には、世界がアッと驚くような戦略を示してもらえれば、もっと良かったと思っているのですが、官僚社会の中でそのような発想はなかなか受け入れられないのでしょうから、まずは今回の成長戦略が成果を上げることを期待したいものです。
弁護士と中小企業診断士の視点で経営者と向き合うプロ
舛田雅彦さん(札幌総合法律事務所)
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