兵庫県教委、大学と協定。教育への効果は期待できる?
実効を上げるにはクリアすべき課題も。パターン化して検証
先日、兵庫県教育委員会と阪大との間で、包括的な連携協定が締結されました。京大・神大とも締結される予定です。内容は、大学の先生が高校に来て出張授業をしたり、高校生が大学の講義を受けたり、研究施設を利用したりできる、というものです。受験指導に携わる中で、高校生が大学のことを知らないだけでなく、高校の先生も(おそらく出身大学以外は)大学のことをよくは知らないのに驚くことがあるので、このような試みの趣旨に基本的には賛同します。しかし、実効を上げるにはクリアすべき課題もあります。私立高校と私立大学の間でも既に似たようなことが行われていますので、その結果、どんなことが起っているか、パターン化してシミュレーションしてみました。
■ケース1:教授の話を聞いて興味を持ち、オープンキャンパスの模擬授業も受けて「A大学に進学しよう」と決心。けれど、成績が足りないので担任の先生に相談。担任の先生はA大学に進学できるよう早くからAさんを導き、Aさんも奮起して勉強して無事合格。
■ケース2:大学の教授の話を聞いて「自慢話ばっかりで感じ悪いし、ちっとも面白くなかったから絶対に、B大学には行かない」と宣言。担任先生からのフォローはなし。Bさんのその後の成績にアップダウンなく、他の大学に進学。
■ケース3:大学の教授の話に感激。大学にも行ってみて「自分は絶対、C大学しか行かない」と決心。担任の先生は「C大学は一流で素晴らしい。たとえ浪人しても志望を貫くべきだ」と助言。Cさんは専門的な内容については大学にも出席して高校の先生にも負けない知識を先取りし、周囲からも一目置かれるが、不得意教科は嫌がって取り組まなかった。しかし担任の先生からは特に受験指導はなく、Cさんは大学不合格。他の大学には合格していたのに、入学手続きをせず予備校に行く。
高大連携のポイントは、大学・高校双方の先生たちの存在
高大連携でポイントとなるのは、先生たちの存在です。大学を代表して携わる先生は、今時の高校生にも対応できる柔軟な人が望まれます。また、高校の先生の意識も試みの成否に大きく関与するでしょう。京阪神大いずれも、誰もが進学できる大学ではありません。浪人すれば、予備校に支払うお金だけで年間100万円かかると言われる昨今、特に公立学校に携わる先生には、安易に浪人を勧めないで、現役で進学させるよう最善を尽くしてもらいたいと思います。
今回の試みで期待したいのは、高校生の見聞が広がり、目標を見出す機会が増えることです。私は普段から「オープンキャンパスや説明会は、高1・高2の間に行きなさい」と勧めていますが、それはその後の意識や取り組みに差となって表れているからです。今後、県域の広い兵庫県の実情を思えば、京阪神大のみならず、近隣国公立大学はもちろん、京都府・大阪府以外の隣接他県の国公立大学との連携も視野に入れて発展することを願います。
女子の受験指導のプロ
櫻井久仁子さん(ATHENE(アテネ)Personal Lesson For Girls.)