兵庫県内172社に是正勧告。今から始める脱・ブラックへの道
兵庫県内のみならず、日本中で労働基準法違反が多発
兵庫労働局が昨年9月、県内208の企業や事業所を調べた結果、82.7%に当たる172社で長時間労働や賃金不払いなどの法令違反があったことがわかりました。「ブラック企業」という言葉の由来は諸説あるものの、ここ数年でじわじわと広まり、昨年、厚労省がブラック企業調査に本格的に乗り出したことで、一気に社会的関心が高まったようです。全国的にも昨年12月には調査の結果が発表され、対象5111事業場のうち約80%の事業場で何らかの労働基準法違反が確認されたとのことでした。
ブラック企業のお墨付きをもらうと、負の連鎖が始まる
これまでブラック企業は、ネット上などで噂が流れていたものの、あくまで主観的で不確かな情報とされてきました。しかし、今回の調査結果を受けて、厚労省は「ブラックすぎる」企業の名を公表するとまで言っています。これは「あなたの会社はブラックですよ」と国によるお墨付きをもらうことであり、会社イメージを著しく損なうことは明らかです。
ブラック企業のお墨付きをもらうと、良い人材が集まらないどころか、現に働いている従業員のモチベーションまで下がってしまいます。労働生産性は下がり、企業業績に影響し、リストラの結果、さらに一部の従業員に負荷がかかる。といった、まさにブラックホールに飲み込まれていくように負の連鎖が始まることにもなりかねません。
労働基準法・労働安全衛生法の基本的な約束事を順守すべき
では、ブラック企業にならないためには、どうすれば良いのでしょうか。答えは、厚労省による今回のブラック企業調査の中にあります。厚労省によると、ブラック企業とは、「若者の『使い捨て』が疑われる企業等」と定義付けた上で、それは離職者数や離職率において高い数字を示す企業とされています。大量に離職する会社には、何らかの問題があるということです。そして、大量離職の背景のひとつには長時間労働問題があるとし、下記を重点確認事項として今回の調査にあたりました。
①時間外・休日労働が36協定の範囲内であるかについて確認し、法違反が認められた場合は是正指導。
②賃金不払残業(サービス残業)がないかについて確認し、法違反が認められた場合は是正指導。
③長時間労働者については、医師による面接指導等、健康確保措置が確実に講じられるよう指導。
労働基準法・労働安全衛生法の基本的な約束事を順守すべき
つまり、ブラック企業にならないためには、上記①~③についてきちんと対応することが大切である。36協定を結び、その内容を守る。サービス残業はさせない。労働者の健康管理に配慮する。これらは労働基準法・労働安全衛生法に定められている、ごく基本的な約束事であって、会社としては順守すべき内容です。
ただし、これまでは労働法規の順守意識が日本企業全体として低かったのではないのでしょうか。「労基法を守っていたら会社は潰れる」という企業側の言葉は、もしかしたら今までは一理あったかもしれない。ただし、今後は「労基法を守らない会社(≒ブラック企業)は潰れる」という流れになることは間違いないでしょう。ブラック企業という烙印を押されないためにも、まずは自社の労働基準法・労働安全衛生法の適合チェックをしてみることをお勧めします。