エンディングノートに遺産の分け方を書くとマズい
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ノートが「遺言」の要件を満たすか否かが問題に
今、「終活」が話題になっています。「残された家族に迷惑をかけたくない」という考えを持つ人が増えているからでしょう。ところが、法律に注意しておかないと、かえって遺族に迷惑をかけてしまうことがあります。
例えば、エンディングノートにすべてを書いておこうとして、遺産の分け方まで書いてしまうのは好ましくありません。なぜなら、エンディングノートに遺産の分け方を書くと、そのノートが法律上の「遺言」の要件を満たすか否かが問題になるからです。法律上、自筆証書遺言といって(民法968条1項)、一定の要件を満たせば自筆による遺言が認められています。その要件とは「①全文を自筆で書く」「②日付を自書する」「③氏名を自書する」「④押印する」の4点です。エンディングノートに遺産の分け方を書いた場合であっても、これらの要件を満たしていれば遺言として有効になりますが、そうでなければ遺言として無効です。
そのため、「遺言として有効か否か」で後に残された方の間でもめ事が起こる可能性があるのです。自筆証書遺言の要件を熟知した上でエンディングノートに記載するという方法も不可能ではありませんが、自筆証書遺言は上記の要件を満たす必要があるほか、加除訂正の方法も厳格であり(民法968条2項)、この点からも有効性が争われる可能性があります。
公正証書遺言を作成して遺言執行者を指定しておくと良い
よって、遺産の分け方については、エンディングノートとは別に公正証書遺言を作成することをお勧めします。
また、終活の一環として生前に葬儀会社との契約を済ませておくケースも多いようですが、その費用をどこから出すかについて意識しておく必要があります。最高裁判決(平成16年4月20日)によると、預金などの可分債権は法律上、当然に分割され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するとされていますが、実務では預金口座は凍結されます。預金を解約しようと思っても、通常、金融機関は多くの書類と相続人全員の押印を要求しますので、解約は容易ではありません。
このような事態を避けるためには、公正証書遺言を作成して遺言執行者を指定しておくと良いでしょう。この場合には、比較的、容易に預金を解約することができます。
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木野達夫さん(宝塚花のみち法律事務所)
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