大阪市の公募校長、辞退・辞職続く。採用の改善が必須
相次ぐ公募校長の辞退・辞職。採用に問題はなかったか?
大阪市が公募する校長の辞退・辞職が相次いでいます。「民間の力を活用して既存の教育現場を改革・改善しよう」という、なかなか画期的な制度のように思えるのですが、一体、現行制度のどこに問題があるのでしょうか?採用する大阪市側の思惑と、応募者側の思惑にズレが生じているのでしょうか?
本件は「校長」という特殊な業務ではありますが、「人の採用」という大きな観点からすれば、一般的な企業の採用と押さえなければならないポイントは同じです。
仕事・職場環境の具体的な情報を提供し、ギャップを抑える
まず大事なことは、仕事・職場に関する具体的な情報開示です。大阪市という公的機関が「校長先生を募集しています」とアナウンスすれば、おそらく一般企業よりは広く採用情報が伝わるでしょう。また、大阪市のホームページに公開されている募集要項をみれば、採用期間や給与を知ることもできます。
しかし、これだけでは具体的な仕事内容・職場環境等についての情報は伝わりません。特に教員経験者以外からも広く人材を公募しているのですから、教育現場が実際どのように機能しているかを想像することしかできない応募者もいることでしょう。校長として働くと、どのような魅力があるのか、また、デメリットがあるのかを事前に知ることは重要なことです。どれだけ熱意のある人でも意気込みだけでは続きません。「採用されたのは良いけれど、当初のイメージと実際が余りに食い違う」ということが生じてしまうと、結局のところ続かない原因となってしまいます。仕事・職場環境に関する具体的な情報を提供し、あらかじめ応募者に理解してもらうことで、採用後のイメージギャップを抑えることができます。
求める人物像を明確化し、求める仕事に対する遂行能力から判断
次に重要なのが、「求める人物像」をはっきりとさせることです。「民間から広く人材を募集する」。これはつまり、「様々な経歴や能力を持った人材を募集する」ということです。個々魅力ある人材が応募してくると思われますが、ここで第一に考えなければならないのは「こちらが求める校長としての仕事が任せられるかどうか」です。単なる抽象的なイメージではなく、任せたい仕事を具体的に挙げて人物像を固めることが大切です。校長として何をしてもらいたいのか、どのような成果を期待しているのかを明確にし、その人物のスペックでなく、求める仕事に対する遂行能力から採用不採用を判断するのです。
また、同時に「求めない人物像」も決めておきます。他のどんな能力が素晴らしくても、どうしても外せないポイントが合格ラインを超えていなければ採用してはいけません。これにより、求める仕事能力とは異なる能力の魅力により、採用の判断がブレることを防ぐことができます。
これらの人材採用に関するポイントを押さえ、大阪市と応募者との間のミスマッチを未然に防ぐことができたなら、今よりも定着率が向上し、教育現場の改革・改善という目標に近づけるのではないでしょうか。せっかくの素晴らしい構想です。ぜひとも上手く機能させてもらいたいものです。
人事労務コンサルティングの専門家
大竹光明さん(社会保険労務士法人大竹事務所)