炎上リスクから企業を守る労務対策
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企業が「とばっちり」を受ける格好で相次ぐ炎上トラブル
「ブログ・Facebookが炎上、社長が謝罪」と、ソーシャルメディアを舞台に、企業が炎上トラブルに巻き込まれる事件が相次いでいます。記憶に新しいところでは、大手外食チェーンやコンビニエンスストアのアルバイト店員や来店客が、お店の食材や冷蔵庫などの備品にいたずらした画像をSNSに投稿したことで、その企業にクレームが殺到したり、店舗が廃業に追い込まれたりするといった騒ぎが起きました。
このようなソーシャルメディアでの炎上騒ぎを従業員が起こさないようにすることはできるのでしょうか。また、どのようにして炎上リスクから企業を守っていけば良いのでしょうか。
まず、最近発生している炎上事件については、従来のソーシャルメディアポリシーやソーシャルメディアガイドラインを策定するだけでは防ぎきれないと認識しておく必要があります。社内のコンプライアンスをいくら厳しくしても、炎上事件が発生しやすい飲食業や小売業では、アルバイト社員が多く、短期間で入れ替わるためコンプライアンスが徹底できません。結果として、企業は「とばっちり」を受ける格好で、簡単に炎上に巻き込まれるようになっています。
炎上事件を起こした場合、服務規律違反に該当。懲戒処分の対象に
ついつい人は、「自分の発言は周囲への影響もないし、炎上することもないだろう」と捉えがちです。この認識の甘さが、炎上問題を引き起こします。SNSの利用は、常にリスクを隣り合わせです。プライバシー設定を正しく行っていないと、不特定多数へ意図せず情報が公開されてしまいます。しかも、一度、流れてしまった情報は削除することが困難で、一定期間ネット上で多数の目に触れる状況にもなり得ます。
従業員が炎上事件を起こした場合、意識する・しないに関わらず、不特定多数の人が確認できる公共的な場で行ったというSNSでの発言自体が「服務規律違反」になるといえます。通常、就業規則には服務規律を規定し、従業員として「行うべきこと」「行ってはいけないこと」「ルールとして守るべきこと」などをルール化し、これに違反をした場合には、相応の懲戒処分と実損害に対する損害賠償請求がされるとしています。
懲戒処分として、訓戒・減給・出勤停止・降格・懲戒解雇等の制裁を課す際には、就業規則で制裁する事由と、それに対する制裁の種類・程度を定めておかなければなりません。炎上事件を起こした場合、会社の信用失墜につながる行為であったという点で、十分に服務規律違反に該当するものであり、懲戒処分の対象となるでしょう。
炎上リスクに目を向け、SNS利用に関する定期的な教育が必要
即効性を求めるのは難しいですが、やはり日頃から炎上リスクに目を向け、情報の取り扱いについては、企業情報・個人情報問わず公開する上での責任を常に自覚するよう、アルバイト社員だけではなく一般社員・役職者に対しても、SNS利用に関する定期的な教育が必要です。
ブログ、Facebook、Twitterなどインターネット上での安易な個人の発言が、社会に影響を与えてしまったり、会社の営業情報漏えいにつながっていたという事件は確実に増えています。「社内ガイドラインや就業規則で規定しているから大丈夫」ということではなく、従業員の意識・認識に訴えていかなければなりません。「情報セキュリティとはどういうことなのか」「どういった行動が情報漏えいや会社の信用失墜につながるのか」「SNSでの発言で炎上事件を起こした場合、どのような処分を受けるのか」といったことを浸透させるべきでしょう。
IT業界を元気にするSE出身社労士
成澤紀美さん(社会保険労務士法人スマイング)
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