自動運転車が事故、責任の所在は誰に?
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自動運転車による事故の責任の所在、メーカー側?運転手側?
現行法下においては、自動車運転者のミスにより人身事故が発生した場合、当該運転者に損害賠償責任が生じる(民法709条)ことはもちろんのこと、その自動車の保有者にも運行供用者として損害賠償責任が生じます(自動車損害賠償保障法3条)。
では、自動運転車が事故を起こした場合、その責任の所在はどうなるのでしょうか。まず、自動運転車とは、一般的には「カメラやレーダーなどで周囲の状況を把握し、ハンドルやブレーキを自動で操作し走行する車」を指しています。現在の道路交通法では、「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」と定めており(同法70条)、運転者が操作しない自動運転車を公道で走行させること自体認められていません。今回の話は、その部分の法改正がなされた上で、ということになります。
自動運転車による事故の責任の所在については、責任を回避したい大手自動車メーカーが「運転する主体はあくまでもドライバーだという認識」と主張していることからもわかるとおり、極端に言えば、「運転者に責任を認めるべきであるとのメーカー側の立場」と、「メーカーに責任を認めるべきであるとの運転者側の立場」とが対立することになります。
運転者の帰責性を問えば、自動運転のメリットに疑問が生じる
運転者に責任を認めるためには、運転者の注意義務違反(帰責性)がどこにあるのかを確定させなければなりません。例えば、「自動運転システムの状態を監視する注意義務」に違反したとか、「自動運転システムの異常に気付き、危険を回避すべき注意義務」に違反したなどとして、その帰責性を確定させることになるのでしょう。
ただ、このような形で運転者の帰責性を問うことが可能だということになると、メーカーの責任が生じるのは、「運転者がこのような注意義務を尽くしたにもかかわらず、なお自動運転車が制御不能に陥って事故が起こってしまった場合」に限定されてしまいかねず、それでは「自動運転」のメリットなどないではないか、といった疑問にぶつかることになってしまうのです。
「自動運転」といっても自動化のレベルは様々であり、どのように作動するのかもわかっていない状態では責任の所在を論じることは非常に困難なのですが、「自動運転車」は渋滞の解消・緩和、交通事故の削減、環境負荷の軽減、高齢者等の移動支援につながるものと期待されているため、その導入に当たっては責任の所在を含めた法整備もしっかりとなされる必要があるでしょう。
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