老朽化マンション無くなる?マンション建替え円滑化法とは?
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平成14年、マンションの建替えを円滑に進めるための法律が制定
マンションは戸建て住宅とは違い、区分所有権を有する多数の入居者の共同住宅です。よって、特定の入居者のみの判断で勝手に建て替えることなどできるはずがありません。もちろん、区分所有権を有する全ての入居者が建替えに賛成している場合には、建替えが可能とはいえますが、建替え事業の進め方についても区分所有権者の全員一致が必要となることがあります。また、工事について、個々の区分所有権者と建替え施工業者との間で工事請負契約を締結しなければならないとなると、時間がかかり、手続も煩瑣となって、建替え事業を円滑に進めることは現実的には難しいでしょう。
法人格のマンション建替組合を設立でき、融資を受けることも可能
そこで、平成14年、マンションの建替えを円滑に進めるための様々な手続や方法を定めた「マンション建替え円滑化法」が制定されることになりました。この法律によりマンション建替え事業を進める場合のマンション住民のメリットの主要なものは以下のとおりです。
まず、法人格を有する「マンション建替組合」を設立することができます。これによって、法人として建替え施工業者と工事請負契約を締結することができますし、建替えのための資金の融資を受けることもできるようになりますので、個々の区分所有権者が手続を執る必要がなくなります。「マンション建替組合」の意思決定方法自体が法律で定められていますので、手続き全般を円滑に進めることができるというものです。
担保権を有する金融機関が建替えに反対することは無くなる
次に、「権利変換」と「一括登記」です。本来であれば、従前のマンションを取り壊してしまった段階で、そのマンションの区分所有権や、これに対して設定されていた担保権(住宅ローンの抵当権)は消滅してしまいます。しかし、これらを消滅させることなく、建替え後のマンションに移行する仕組みが定められましたので、担保権を有する金融機関がマンション建替えに反対するということはなくなり、建替えを望むマンション住民にとっては都合がよくなります。
なお、権利を建替え後のマンションに移行させるための登記手続についても個々の区分所有権者において行う必要はなく、マンション建替組合において一括登記ができるものとされています。
反対する区分所有権者は買取り請求を行うこともできる
最後に、マンション建替えに反対する区分所有権者の利益保護です。マンション建替組合が設立されたとしても、マンション建替えに反対する区分所有権者の利益を一方的に損なうことはできません。マンション建替組合において、その区分所有権そのものを売り渡すよう請求することができ(売渡し請求)、あるいは、反対する区分所有権者がマンション建替組合に対し、その区分所有権を買い取るよう請求することができる(買取り請求)ものとされています。このような仕組みを設けることで反対する区分所有権者の利益が守られます。
以上により、建替え事業を円滑に進めることができるため、特に老朽化が進むマンションで生活し、安全面などを心配している住民にとっては大きなメリットといえるでしょう。
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