国債発行額が過去最大。借金まみれの日本は大丈夫?
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国債の発行予定額は2年振りの増加で過去最高の181.5兆円に
昨年のクリスマスイブ、財務省から平成26年度の国債発行計画が公表されました。発行予定額は+13.9兆円と2年振りの増加で過去最高の181.5兆円。発行残高も881.7兆円(うち普通国債は780.4兆円)に達する見込みです。早速に、財政再建を標榜しながら本気で国債を減らそうとの姿勢が見られないといった批判や、国債価格の下落や長期金利の上昇につながるのではないかとの懸念の声が上がっています。実際のところはどうなのか、検証してみましょう。
発行額の増加は、主に借換債(+11.3兆円)と財投債(+5兆円)に起因しています。借換債は、60年償還ルールに基づき普通国債償還財源の一部を調達するために発行される国債ですが、年々増加傾向にあり、財政健全化にあたっての最大の障壁となっています。単年度の償還を抑制するため、市中発行の平均償還年限を延長していますが、これが国債発行残高を増加させる一因にもなっています。
財投債も大幅に増加します。ただし、財投債は、財政融資資金の財源となるもので、独立行政法人への貸付金回収等により償還や利払いが行われるため、国連国民経済計算体系でも一般政府債務からは除外されています。
これに対し、建設国債や特例(赤字)国債などの新規財源債は、41.3兆円と1.6兆円の減少になりました。国債費や社会保障関係費等の支出が増加するものの、消費税率引き上げや法人所得回復により大幅な税収増が見込めるため、特例国債の発行を減らしたものです。 この結果、公債依存度は3.3%、プライマリーバランスは5.2兆円と、それぞれ改善されました。政府・自民党が、財務規律維持方針は貫いたと自負する所以はここにあります。
日本国債のデフォルトは考え難いが、現状では残高が減少しない
ところで、我が国の財政事情は、どの程度、危機的な状況にあるのでしょうか?国債発行が、このまま増え続けると一体どうなるのでしょう?
まず、財政事情についてです。財務省が公表した資料に拠れば、26年度末の普通国債残高の対GDP比率は156%、国民1人当りに換算すると実に615万円になります。勤労者世帯(平均世帯人員3.42人)の平均年間可処分所得が510万円ですから、住宅ローンに例えるならば、収入に占めるローン返済の比率が40%を超えることになります。(615万円×3.2÷8年5ヶ月)÷510万円=45.8%)
ところが、日本政府は一方で多額の資産を保有しています。日銀統計を基に試算すると、政府純債務は約600兆円で、粗債務の半分程度になります。民間非金融債務と合わせても900兆円で、1200兆円といわれる家計純資産を遥かに下回ります。このため、預貯金を原資に、国内金融市場で国債が低利・安定的に消化される構図に変化がなければ、日本国債のデフォルトは考え難いことになります。これは、かつて「S&P」等の海外格付け会社が日本国債のレーティグを下げた際に、財務省が提出した反論書にあるロジックですが、基本的には今も同じです。
しかしながら、これでは国債残高が一向に減少しません。間接税を主体に税収を増やし、一方では高齢化の進行に対応した社会保障費の削減を図る等、痛みを伴う構造改革に本気で取り組まなければ、日銀による需給調整だけでは早晩限界が来ます。
差し迫って長期金利上昇の可能性は少ない
そして、当面の長期金利上昇(⇒国債価格の下落)ついては、現在のような超金融緩和政策の下で金利が上昇する要因としては二つ考えられます。一つは、財政健全化の動きが後退したと見做され、信任低下から国債が売られる可能性。もう一つは、海外金利動向や国内業況感の改善に連動した金利上昇の可能性です。
昨年11月を節目に、長期金利は緩やかな上昇に転じました。同月の全国総合物価指数は+1.5%ですから、実質金利はマイナスになります。経済成長との連動ではなく、円安による輸入物価上昇の影響を受けた金利上昇でした。
年初来株安が続いています。為替も円高基調に変わり、10年物国債利回りも急落しています。政府が目論む年1.4%の実質経済成長率の達成は微妙な状況で、差し迫って長期金利上昇の可能性は少ないようです。
老後に備えた資産形成や不動産活用を顧客目線で考える税理士
松浦章彦さん(<Office MⅡ>松浦章彦税理士事務所)
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