「泣く子に睡眠薬」の笑えない危険性
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睡眠薬は、脳を強制終了させる薬
ホリエモンこと元ライブドア社長の堀江貴文氏が、公共交通機関内で泣く乳幼児への保護者の対応として「睡眠薬を飲ませたら良い」などと自身のツイッターで発言したことが話題になっています。発言の本質は、「公共交通機関内では保護者がしっかりと子どもの面倒を見るべきである」ということを言いたいのだと思いますが、堀江氏のキャラクターからか、冗談や風刺であっても荒っぽい感じが否めません。
睡眠薬というのは神経に作用する薬剤です。極めて簡単に表現をすると、活動している脳を強制終了させるようなものです。ましてや情緒や神経も不安定で、体の中で薬を処理する肝臓・腎臓が未発達な乳幼児にそのような薬を内服させることは、病的な理由で眠れないのであればともかく(それでもどうかと思いますが)、治療的な必要性もないのに使用することは大きな間違いです。確かに20?30年前の睡眠薬というと、依存性が高く麻薬のようななイメージがあったかもしれませんが、現在では副作用が少ないものが増えてきているのも事実です。しかし、今でも簡単に使用すべき薬剤ではありません。
「泣く」を停止させることは発育過程において副作用以上に危険
睡眠薬を乳幼児に服用させることの危険性は前述のように薬剤の副作用があることはもちろんですが、「泣く子に睡眠薬」を服用させることが「危険」と感じるのは、保護者が安易に睡眠薬を使用する恐れがあるからです。生まれたばかりの赤ちゃんが夜中にお腹が空いて泣くのは当たり前のことですが、小児科の医師に「夜泣きをするので睡眠薬をほしい」と言った保護者がいるというような、ウソのような話もあるぐらいです。
乳幼児は感情や気持ちを上手に伝えられないため、「泣く」ということは大切なコミュニケーションツールです。泣くことで何かを伝えたいのですが、その行為自体を睡眠薬で停止させることは発育過程を考えても薬の副作用以上に危険なことです。
睡眠薬で「黙らせる」という行為は、問題の根本解決ならない
また、乳幼児が泣き止まないから睡眠薬を使うというのは、睡眠薬という薬本来の使用方法からもかけ離れています。病的な原因で睡眠が上手に取れない時に、一時的に補助してくれるのが睡眠薬です。眠れなくなってしまった体の弱りを治す薬ではないので、不眠になった原因をきちんと改善しないと、いつまでも服用しなければならないことになります。これと同じで、公共交通機関で泣き叫ぶ乳幼児を睡眠薬で「黙らせる」という行為は、問題の根本解決にはなりません。本来であれば、乳幼児が気分よく移動できるように、また、周りに迷惑をかけないように様々な工夫をするべきなのです。
「泣く子を睡眠薬で黙らせる」。そんな風潮になることは無いと思いますが、薬というものに対して、もう一度その役割を考えてみるべきではないでしょうか?
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