100倍の性能「ポスト京」、関西経済の起爆剤に期待
過去には世界首位を獲得したスパコン「京」も現在4位に甘んじる
昨年12月24日、平成26年度予算案を政府が閣議決定しましたが、その中に、次世代スーパーコンピュータの開発費が計上されました。スーパーコンピュータ(スパコン)は、一般には馴染みのないコンピュータですが、民主党政権時代の事業仕訳で「2位じゃダメなんでしょうか?」と言われたコンピュータとしては、多くの人の記憶に残っていると思います。
この時のスパコンは、現在「京(けい)」と名付けられ、事業仕訳時の予算削減の危機を乗り越え、平成24年に完成し、現在本格稼働中です。コンピュータの性能は1秒間に何回計算できるかで計られますが、「京」は1兆の1万回という途方もない性能で計算できます。平成23年には年2回行われるスパコン世界ランキング「TOP500」で連続首位を獲得し、当初の目標を達成しました。しかし、先端技術に関する世界の競争は激しく、平成25年には、首位を中国の「天河2号」に取られ、現在4位に甘んじています。
副作用の少ない抗がん剤作りを目ざす創薬分野での応用も
スパコンというのはどんなコンピュータなのでしょうか。明確な定義はありませんが、その時代の一般的なコンピュータに比べ、非常に大量のデータを超高速処理できる超高性能機とされています。そして、それゆえ主に大規模な科学技術計算に利用されています。具体的には、構造物の強度解析をする力学計算、水や空気の流れを解析する流体力学、気象解析などの、数式で表されるモデルを用いて大量の計算をし、その挙動をみる、いわゆる「シミュレーション(模擬)」によって新たな設計を行うといった用途が主なものです。
最近では、高い効果があり、副作用の少ない抗がん剤作りを目ざす創薬分野での応用も活発にすすんでいます。この分野では、物質の構造をシミュレーションし、複数物質間の相互干渉を総当たり的に解析して有効な物質の構造を見つけることが必要なのですが、従来のスパコンでは約2か月もかかるほどの計算量でした。それが現在の「京」では2~3日にまで短縮されましたが、より効率的な研究開発のためには、まだまだ速いスパコンが求められています。
「ポスト京」が神戸に設置されれば、大きな経済効果が発揮される
今回、予算計上された次世代スーパーコンピュータは、「京」の次世代機にあたり、「京」の性能の100倍の性能を目指し、平成30年の製造を目標としています。日本語の単位・京の100倍は、英語の単位で「エクサ」といい、次世代スパコン開発プロジェクトは「エクサスケール・スーパーコンピュータ開発プロジェクト」と呼ばれ、「京」の開発の時と同じく、神戸にある理化学研究所計算科学研究機構が開発主体に決定しました。
関西は、製薬企業、医療機関、大学等が集積する、日本有数のライフサイエンスの研究開発拠点です。関西は政府の「関西イノベーション国際戦略総合特区」に指定されていますが、そこにおいてもライフサイエンスは重点分野に位置づけられています。
創薬分野の研究開発に威力を発揮する次世代スパコンが神戸に設置されれば、この分野の研究開発が加速し、関連企業の事業創出に寄与すると予想され、大きな経済効果が発揮されるでしょう。