洲本市が田舎暮らし推進。建築士が語る古民家の魅力
どこか懐かしいような安らぎ感のある根強い人気の古民家
兵庫県洲本市では、平成23年11月に「洲本市田舎暮らし推進協議会」を発足しました。以後、地域の魅力づくりをひとつのきっかけとし、主に島外からの移住者を受け入れる環境づくりや、移住および定住の促進を図るため、実効的な施策を展開しています。
雑誌の特集記事やライフスタイルの一部としても取り上げられ、根強い人気がある「古民家」とは、その名前の通り「日本古来の伝統住宅」のこと。同じ伝統建築でも、宮大工が腕をふるい細工や造作にも拘った寺社建築などと違い、その地にある材料を使い、その地に住む大工が、そこに住む人のために作った「普通の民家」のことを指します。
では、なぜ、この「普通の民家」が注目されるのでしょうか?それは、現在の住宅が全国的に画一化してしまったことにあるのではないかと思います。物流の発達により建築材料は世界中から集められ、資材は規格化された工場製品となり、品質面での住宅の性能は向上しました。しかし、その反面、その地域の歴史や文化、風土を感じられるような味わいのある住宅は少なくなってしまったのです。今では田舎に建つ家でさえ、ハウスメーカーのつくる規格化住宅が主流です。かつての「一般的な田舎の家」で感じられた、どこか懐かしいような安らぎ感は、次第に得難いものになってきているのです。
「懐かしさ」は残しつつ安全に暮らせるように手を入れる
地域に根ざし、歴史を重ねた古民家。田舎暮らしをして、そのような家に住んでみたいと思う人も多いでしょう。しかし、歴史のある住宅といっても中身は「古い家」です。そのままで安全に住めるわけではありません。
ほとんどの古民家は、改造するのに許可が要るような文化財ではありません。必要であれば手を入れて、安全で住みやすい家にしていけば良いのです。例えば、昔の日本の住宅の弱点として、基礎部分が弱いことがあります。このような部分は、今の技術で補強した方が良いでしょう。住宅は、安全が第一です。家のイメージを壊さないように、安心できる家になるように手を入れてください。
「不便を楽しむ」改築こそ古民家で暮らす醍醐味
快適性の面で手を入れるなら、まずは水まわりでしょうか。キッチン、トイレ、浴室などの住宅設備は、必要に応じて使いやすいように取り替えた方が良いでしょう。しかし、一方で、古民家では、こうした「便利にするための改築」に対して、「不便を楽しむ」という改築もあります。たとえば薪ストーブ、囲炉裏、木の建具、井戸など、「手間はかかるけど、味わいのある住宅設備」を残す、あるいは新たに導入することは、古民家での生活を楽しくするかもしれません。
今時の住宅に比べ、古民家に住むことは何かと手がかかることが増えます。しかし、手を掛けた分だけ愛着が沸き、その空間は懐かしく安らぎを感じられる場所になるでしょう。そこに価値を見出せるのなら、田舎での古民家暮らしは最高といえるかもしれません。