ワンコインタクシー消滅、なぜ?
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規制緩和で生まれたワンコインタクシーが消滅の危機に
小泉政権下の平成14年2月に施行された「平成12年5月改正道路運送法」では、算入規制が免許制から許可制へ移行されました。これに伴い、認可や事業計画変更の基準から受給の調整に関する条項を原則撤廃し、タクシーの増車や減車について事前届出制に変更するなど、規制が緩和されました。これにより新規参入が進み、初乗り運賃500円というタクシーが登場したのです。ワンコインタクシーの名称で認知されるようになりました。しかし、消費者の財布にやさしいワンコインタクシーが、消滅の危機を迎えています。
平成21年10月1日、規制緩和による供給過剰の状況による収入基盤の悪化や運転者の賃金などの労働条件悪化を防ぐため、「特定地域における一般乗用居客自動車運送事業の適正化及び活性に関する特別措置法」(タクシー特措法)が施行されました。特措法では、タクシー事業の(1)供給過剰の状況、(2)事業用自動車1台あたりの収入の状況、(3)法令の違反その他の不適正な運営の状況、(4)事業用自動車の運行による事故の発生状況により、タクシーが地域公共交通としての機能を十分に発揮できない地域を国土交通大臣が「特定地域」として指定できることになりました。この特定地域に指定されると、同地域の営業区域でタクシーを増車しようとする場合、事業計画の変更について、事前届出制ではなく国土交通大臣の認可が必要になりました。また、地域協議会が地域計画を作成して減車に取り組み、増車要件を厳格化する特定事業計画による規制も認められました。
各種審査に耐えられないワンコインタクシーは減少傾向に
そして、運賃料金の認可にかかわる新たな制度として、全国一律で上限から10%低い額で設定していた自動認可運賃の下限を地域の実情に即した額とし、自動認可運賃の下限を下回る運賃の認可については「運送人件費、その他費用の審査」「不当な競争を引き起こす要因があるかどうかの審査」「割引運賃を実施した後の運賃収入が全体として『適正な原価』に『適正な利潤』を加えたものになっているかどうかについて審査」を行い、認可の際の指導も行うことになりました。このような審査に耐えられないワンコインタクシーは、行政からの指導により料金変更を余儀なくされ、減車傾向にあったのです。
そんな中、平成25年11月27日、改正措置法が成立しました。特定地域及び供給過剰となるおそれがあるとして指定される準特定地域(新設)において、国土交通大臣が運賃の範囲を指定することとし、事業者はその範囲内で運賃を定め、届出をすることとされています。国土交通大臣は、届け出られた運賃が、その範囲内にないときは、運賃の変更を命ずることができるようになります。同改正法は、平成26年1月27日に施行されます。
初乗り運賃の規制は強化されるが、サービスの開拓に期待
規制緩和による供給過剰にある地域の適正化および活性化を目的とする特措法の趣旨や、これまでの規制緩和から規制強化への流れからすれば、国土交通大臣が指定する運賃の範囲は、以前の下限を下回るワンコインタクシーを許容するものではないことが予想されます。同法の施行および国土交通大臣の指定がなされることで、ワンコインタクシーは消滅することになるかもしれません。
ワンコインタクシーをはじめとする低運賃のタクシーは、通勤や通院、買い物に乗車するなど、これまでタクシーを利用していなかった人たちにも、その機会を提供してきました。タクシー事業のサービスの意義が、広く浸透していたと思います。初乗り運賃の規制は強化されますが、タクシー各社において、それ以外の運賃体系の工夫や利用者目線に立ったサービスの開拓がストップしてしまわないことを期待したいです。
企業法務と事業承継支援の専門家
大西隆司さん(なにわ法律事務所)
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