がん登録法成立、患者へのメリットは?
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国が全国のがん患者情報をデータベース化して一元管理
今月6日の衆議院本会議で「がん登録推進法」が可決され、成立しました。この法律は、医療機関にがん患者の情報提供を義務付けて、国が全国の患者情報をデータベース化して一元管理することを内容とするものです。
以前から、都道府県別のデータを出すために協力する全ての医療機関のデータを集める「地域がん登録」と、施設別のデータを出すために国が指定した「がん臨床連携拠点病院」を中心に実施される「院内がん登録」というものがありました。しかし、すべてのがん患者が登録されるわけではありません。県内の患者が県外の医療機関を受診したり転出したりした場合の情報が得にくいなどの欠点があり、最新の全国の罹患率も25府県の2008年の登録情報を用いて推計したり、最新の5年生存率も2003年ないし2005年の7府県の登録情報を使用しているなど、お粗末な状態が続いていました。
がんは、国民の2人の1人がかかり、3人に1人が亡くなっているという実態があります。がん対策の企画立案や評価に際しての基礎となるデータを把握・提供するために、がん登録が必要不可欠であるとされているにもかかわらず、その整備が遅れています。2007年4月に施行された「がん対策基本法」に基づく「がん対策推進基本計画」において、重点的に取り組むべき事項の一つとして「がん登録の推進」が掲げられましたが、先進国の中でも特に取り残された状態が続いていました。
法律を通じて「がん医療の質の向上」が図られ、予防も推進
このたび成立した「がん登録推進法」により、地域にとどまらない全国規模のがん登録(全国がん登録)が実施されることになりますが、これによって蓄積された情報をもとに、国や都道府県等が、がん対策の立案、医療機関への情報提供、統計等の公表、患者等への相談支援を行えることが期待できます。また、医療機関や研究者において、患者等に対する適切な説明、がん医療の分析・評価等、がん医療の質の向上や予防の推進に役立てることができそうです。
個人情報保護への懸念に対しては、登録情報は適正に管理されることが予定され、個々の国民が全国がん登録データベースに直接にアクセスすることはできず、情報の開示請求そのものも認められておりません。
結局のところ、この法律を通じて我が国における「がん医療の質の向上」が図られ、ひいては、個々のがん患者に対する治療に寄与することになるのでしょう。がんの予防も推進されていくということなのだと思われます。
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