転載で名誉毀損に。SNS利用に潜む法律の落とし穴
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著作権侵害はハイパーリンクで予防
インターネットの利用においては、さまざまな法的問題が生じます。たとえば、他人の作成したウェブサイトやブログなどにおけるレイアウトや構成、イラスト、写真が著作物(思想又は感情を創作的に表現したもの)に該当する場合には、作成者に無断で真似し、あるいはそのまま掲載すると、著作権侵害となります。もちろん、レイアウトやイラストの中には、単純なものや極めてありふれたものもあります。作成者の「思想又は感情を創作的に表現したもの」とはいえない場合には、そもそも著作物には該当しないため、著作権侵害の問題は生じませんが、単純とか極めてありふれているといった評価を自分勝手にしてしまうと、後で痛い目に遭ってしまう恐れがありますので、そのような判断は慎むべきでしょう。
そこで、自分のブログなどで他人のウェブサイトを紹介したい場合には、掲載内容をそのまま取り込むのではなく、そのウェブサイトのURLを表示する方法(ハイパーリンク)が無難です。URLは単なるサイトの場所を表示するに過ぎず、著作物とはいえないため、これを自己のブログなどで掲示しても著作権侵害とはいえないからです。
他人の名誉毀損発言、転載やハイパーリンクで名誉毀損に
次に、名誉毀損の問題です。ブログなどで他人の名誉を毀損する発言をした場合に、その発言者が名誉毀損に該当することはいうまでもありません。では、すでに他人のブログ上で名誉毀損発言がされていることを自分のブログでも紹介するために、その内容を転載する行為はどのように扱われるのでしょうか。すでに名誉が毀損された状態が生じたのであれば、同じ内容でさらに名誉が毀損されることがあるのかという点が問題となります。東京地方裁判所が2013年4月に下した判決では、「既に公開されているインターネット掲示板に掲載された記事又は出版された書籍の内容を転載したものに過ぎず、これらの記事の掲載または書籍の出版以上に原告の社会的評価を低下させるものではない」と判断されていたのに対し、その控訴審である東京高等裁判所は同年9月に「新たにより広範に情報を広め、控訴人の社会的評価をより低下させた」ものと判断し、一審判決を取り消しました。
さらに進んで、他人がブログ上で行った名誉毀損発言をハイパーリンクの方法で紹介した場合はどうなるのでしょうか。上記の東京高等裁判所の判断を前提とすると、ハイパーリンクの方法であっても名誉毀損発言を広めることに一役買ってしまうようなものですから、やはりアウトと考えるべきではないでしょうか。
インターネットの普及に伴い、SNSを利用する人が増えてきました。しかし、その手軽さの裏で著作権侵害や名誉毀損の問題が生じる可能性があることに十分に注意が必要です。
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