賭博への投資勧誘で提訴。銀行員の責任は?
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銀行員に勧められた投資で3億8千万円損失。不法行為か?
報道によると、夫の遺産をA銀行に預けていた女性Bさん(79歳)が、担当だった銀行員Cに勧められた投資で8千万円を失ったところ、Cらから「損失を取り戻しましょう」とS投資会社への投資を持ちかけられました。そして、合計3億8千万円を投資しましたが、実はS投資会社はスポーツ賭博を利用した特殊な投資をする会社であったために、Bさんはさらなる損失を被ったことから、A行とCを提訴したのです。
この場合、銀行員Cの責任の判断にあたっては、投資勧誘行為に不法行為(民法709条)を認めることができるかが問題となります。本件のようなリスクを伴う投資への勧誘行為についての判例は複数ありますが、(1)適合性原則違反(2)説明義務違反の観点から不法行為責任の有無を判断しています。
スポーツ賭博を利用する特殊な投資、適合性の原則から逸脱
適合性原則とは、金融商品取引業者等は金融商品取引行為について、顧客の知識、経験、財産の状況、金融商品取引契約を締結する目的に照らして、不適当と認められる勧誘を行ってはならない、という行動規範です。適合性の原則から著しく逸脱した金融商品を勧誘してこれを行わせたときは、当該行為は顧客に対する不法行為となるとされています。その判断に当たっては、具体的な商品特性を踏まえ、相関関係において、顧客の投資経験、金融取引の知識、投資意向、財産状態等の諸要素を総合的に考慮するのが相当であるとされています(最高裁平成17年7月14日判決)。
本件は、スポーツ賭博を利用する特殊な投資であり、明らかに過大な危険を伴う取引にあたるといえるでしょう。顧客のBさんが、よほど投資意向が強いなどの特殊な事情がない限り、適合性原則違反が認められるものと解されます。
説明義務違反の可能性大。銀行の使用者責任も
また、投資商品を販売する金融機関の担当者は、顧客に対して取引を勧誘するにあたり、顧客の自己責任による取引を可能とするため、取引の内容や顧客の投資取引に関する知識、経験、資力等に応じて、顧客において当該取引に伴う危険性を具体的に理解できるように必要な情報等を提供して説明する信義則上の義務(説明義務)を負うものとされています。本件のBさんは79歳と高齢の女性で、あまり取引経験はないようです。行員Cが、S社がスポーツ賭博を利用する特殊な投資であることと、リスクの大きさ等をBさんにも十分に理解できるような平易な言葉で説明していたことを立証しない限り、説明義務違反が認められるものと解されます。
そして、銀行員Cに不法行為責任が認められる場合、その行為が「事業の執行について」行われたものと認められる以上は、A銀行についても使用者責任(民法715条)が認められることになるでしょう。
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