長期金利上昇傾向の中、住宅ローンを選ぶには?
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「全期間固定型」「固定期間選択型」「ミックス型」……住宅ローンは数千種類にも上る
住宅ローンの選択も住まい探しの重要な要素です。購入金額に対して自己資金で調達できる頭金の割合が少ない場合は、住宅ローンの選択は第一優先で検討しなければなりません。住宅ローンの金利タイプは、全ての期間において固定される「全期間固定型」や、金利の固定される期間が2~20年程度の期間から選べる「固定期間選択型」、金利情勢において変化する「変動金利型」など、さまざまなタイプがあります。また、最近では固定と変動を併用する「ミックス型」なども現れ、その数は数千種類もあるといわれています。
購入する住まいのタイプによっても異なりますが、超低金利が続いたこれまでの20年近くの時代は、金利上昇のリスクがあるものの当面の返済額が最も少ない「変動金利型」か、変動金利型と全期間固定型との中間的な性格を持つ「固定期間選択型」の金利タイプを選ぶ人が大半で、「全期間固定型」を選ぶ方は少数派でした。しかし、2013年春に着任した黒田東彦日銀総裁による通称「黒田バズーカ砲」によってトレンドが変化しました。
黒田バズーカ砲の想定外の破壊力
「黒田バズーカ砲」の目的は、消費の刺激、経営マインドの改善、円安、そして、日銀による国債の大量購入により金利を安定させ、企業の投資意欲を回復させることにありました。結果は円安や株価の刺激という面では絶大な効果を発揮しました、しかし、現時点で断定するには拙速かもしれませんが、金利のコントロールについては想定外の破壊力を発揮し、決して成功しているとは言えない状態です。想定外の長期金利の上昇局面をむかえ、一部のネット系住宅ローン会社を除き、大手都市銀行系の主力商品である10年間固定金利型住宅ローンの金利は、政府の目論見とは逆に、この5月に軒並みに貸付金利を引き上げました。
第一候補はセオリー通りに長期間固定金利
2%のインフレターゲットを掲げた政権の発足により金利上昇懸念を感じ、「金利上昇局面では長期(又は全期間)固定金利型ローンを選択」というセオリーに沿って行動した人が増え、今年の始めから「全期間固定型」の金利タイプのシェアが金融機関によっては2倍以上になるなど、住宅ローンを借りる人のマインドの変化は既に起き始めています。全期間固定金利型住宅ローンの最大のメリットは金融市場の変化に左右されず、いつまでも変わらない返済額ということです。つまり金利が上昇するであろうと思われる局面であれば全期間固定金利型住宅ローンを選ぶのは当然のことともいえます。しかし、金利の上昇局面であっても誰でもが全期間固定金利タイプを選べばよいということではありません。固定金利のデメリットは、変動金利型に比べ一般的には金利が高いことです。また、変動金利の上昇基調よりも早いタイミングで上昇に転じるのが固定金利の特徴ですので、少々金利が上昇したからといって慌てて固定金利を選択すると、高止まりした金利を長期にわたって返済しなくてはならなくなることもありえます。金利が上昇トレンドに転換したからといって、歴史的に見れば今はまだ超低金利であるということに変わりはありませんし、このまま上昇を続けることが確定している訳でもありません。
金利上昇局面での変動金利型
「変動金利型」のメリットは金利が低いことです。金利が低い分、元本の返済が早く進みます。その逆に変動金利型のリスクは、金利が上昇したときに返済負担が上昇することです。よって、これから金利が継続的に上がることが確定的であると考えるのであれば変動金利型は避けるべきでしょう。ただし、問題はその「上がり方」と「上がり幅」です。金利が上昇するといっても、たとえば明日突然に2倍になるわけではありませんし、一本調子で永遠に上がり続ける訳でもありません。金利上昇局面であっても、例えば10~15年程度の期間で返済できる人や、常に金利の動向に目を配り、場合によっては繰上返済や固定金利への借り換えができる人であれば変動金利型を選択することも良いでしょう。
金利上昇局面での住宅ローンの選び方
住宅ローンの返済と、教育資金や老後資金の確保は切っても切れない関係にあります。特に老後資金はリタイア時に必要な資金を貯蓄しておく必要があるので、住宅ローンを組むのと同時に貯蓄計画を策定しておく必要があります。「まだ住宅ローンの返済すら終わっていないのに老後資金の計画なんて雲をつかむような話だ」といって無計画のままにしておくと永遠にリタイアできない老後生活になることも考えられます。つまり、老後資金の貯蓄を始める前に住宅ローンの返済を終わらせておくのが理想です。仮に現年齢が35歳、定年が65歳の人が退職金のある会社に勤めていて、リタイア時にまとまった老後資金が確保できるのであれば、定年と同時に住宅ローンの返済が終了すれば良いわけですから30年間の返済期間を計画できます。ただし、リタイア時期までに無理やり住宅ローンの返済を終了させようと過度に短期返済する計画を組んでしまうと、月々の返済に窮することもありますので計画的な繰上返済などで対応することも考えておくことが望ましいでしょう。「変動型」と「固定型」とで毎月の返済額を比較するだけでなく、何年で余裕を持って返済できるのかを同時に考えなければいけません。
超低金利が続いたこれまでの20年近くの時代は、返済能力に見合った借入額であれば変動金利タイプでも固定金利タイプでも急激な収入の減少さえなければ破綻する恐れは少なかったと言えますが、経済も世情も転換点をむかえたと考えるのであれば、今まで以上に慎重に住宅ローンを選ばなければいけないでしょう。しかし金利の動向に関係なく住宅ローン選びの原則は下記の2点です。
◆余剰資金がある。返済期間が比較的短期。 → 変動金利でも可
◆返済期間が長期になる。返済上昇リスクを負いたくない。 → 固定金利
ということに変わりはありません。転換点をむかえた今、今後住宅ローンを組む人にとっての違いは、変動金利型を選択しても問題なく返済できる人の割合がさらに今後は少数派になったということでしょう。
生涯設計を大切にする不動産コンサルタント
戸軽進さん(ハウジングコンサルティングファーム(ホックス))
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