公職選挙法、どのような行為が違反?
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選挙の公正を確保する目的で規制を設ける公職選挙法
真の民主主義政治が行われるためには、選挙そのものが公正に行われる必要があることは言うまでもありません。選挙の過程が捻じ曲げられた選挙では、ある特定の利益を代表する者のみが当選することにつながり、国民の多様な意見が政治に反映されなくなります。
公職選挙法では、選挙の公正を確保する目的で、政治家や後援団体による寄付の禁止(同法199条の2~)や、事前の選挙運動の禁止(同法129条)、戸別訪問の禁止(同法138条)、飲食物提供の禁止(同法139条)、あいさつ状の禁止(同法147条の2)など、広汎な規制を設けています。そこで、どのような行為が許され、あるいは、アウトになるのか、代表的な上記について具体的に説明します。
公職選挙法に抵触する代表的な5つの事例
まず、政治家や後援団体による寄付について。これは、選挙区内の者に対する一切の寄付が禁止されていますので、招かれた結婚式で祝儀を出すことや葬式で香典を手渡すこと、お中元やお歳暮を贈ることなどもできなくなります。
次に、事前運動の禁止です。選挙運動は、公示日(告示日)における候補者の届出があった日から選挙期日の前日までしか許されていません。その間であれば、電話による選挙運動も可能です。もちろん、深夜に行うなど、相手の平穏な生活を侵害するような態様で行うことは論外です。
そして、戸別訪問の禁止。戸別訪問は、買収、利益誘導、威迫などの不正行為の温床となることなどを理由に禁止されています。他の用件で選挙人の自宅を訪問したついでに投票依頼をしたとしても、やはり許されません。
さらに、飲食物提供の禁止では、誰であっても選挙運動に関して飲食物の提供をしてはならないものとされています。ただし、「飲食物」といっても「湯茶及びこれに伴い通常用いられる程度の菓子」や、選挙事務所で食事をするために提供される弁当は除かれています。また、選挙区内の者に対し、「答礼のための自筆によるものを除き、年賀状、寒中見舞状、暑中見舞状、その他これらに類するあいさつ状(電報その他これに類するものを含む)」を出すことも禁止されています。あいさつ状の文面そのものは印刷し、名前を自署するといったものでも許されていません。
公職選挙法の罰則の最初に規定される「買収」は最も悪質
最後に、選挙後にしばしばニュースで取り上げられるのは「買収」です。公職選挙法221条1項は、当選目的(あるいは当選させない目的)で「金銭、物品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与」をした場合のみならず、供与の申込み又は約束をしたこと、その相手方となったことなども処罰の対象としています。買収は、悪質なものとして罰則の最初に規定が置かれています。
今回、徳田毅衆議院議員の姉ら6人が公職法違反容疑で逮捕されたケースは、衆議院選挙の選挙運動に関わった系列病院などの職員らに選挙運動の報酬として、約1億4750万円相当の現金や航空券代を支払ったものとされています。その規模も大きいため、これが本当のことであれば選挙の公正を極めて害するものといえるでしょう。
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