ミクシィ不可解人事、「いきなり研修部屋へ」は問題なし?
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社内ネットワークへのアクセスが制限された研修部屋へ
先日、ポータルサイトのニュースに「いきなり研修部屋へ ミクシィ不可解人事」という見出しの記事が掲載されていました。
記事によると、業績が厳しい株式会社ミクシィが、新経営陣のもとで大胆な人事異動を行い、400人以上いる社員の半数以上を異動させたとのこと。中でも、その人事異動の対象となった時短勤務の女性社員を含む複数部署30人ほどが、突然貸し会議室に呼び出されて、人事異動としてカスターサポート部門に異動を命じられたことが問題視されています。今までセミナー用に使っていた部屋を研修部屋へ転用したところに、土日をはさんで翌営業日からカスタマーサポート業務をするようにいわれた、ということです。その後、座席をすぐに移動するよう命じられ、社内ネットワークへのアクセスが制限されたことから余計騒動になりました。
人事異動の一つとして、ミクシィはリストラを否定
今までの業務を全部中断し、いきなり休み明けの翌営業日から研修部屋へ行くように命じられ、さらに行き先が急ごしらえの部屋といった環境では、退職勧奨目的の「追い出し部屋」と周りからいわれても不思議ではありません。
一方で、通常の人事異動に過ぎず、ちょっと乱暴ではあったものの、必要に応じて実行していることともいえます。人事異動を命じることは使用者側の権利であることを考えれば、それに対して何ら問題はありません。
今回ミクシィは大胆な人事異動を発令したわけですが、ミクシィ広報担当者は、「適材適所の人事異動・組織変更を実施しており、11月1日付けの人事異動も同様。従業員には、部署での業務に応じたイントラネットへのアクセス権を付与している」と説明し、リストラを否定しています。
退職強要があれば違法
問題になるとすれば、この研修部屋へのいきなりの人事異動が、不当な動機目的でなされていないか、ということです。すなわち、会社がその従業員をやめさせることを目的として、ほとんど仕事がない名目ばかりの部署に配置転換している場合、配置転換命令は権利の濫用として無効となることもあります。
また、この研修部屋が以前、大手企業で騒ぎになった「追い出し部屋」のようなものに該当するのかどうかということです。一般的に過去のケースでは「追い出し部屋」については、そこで退職強要などが行われる可能性が高く、それらは民法上の不法行為に該当することから問題とされます。そして、研修部屋でパワーハラスメントが繰り返され、仕事を一切与えないで自己都合で退職させることを目的として追い込むような環境になっている場合、それは違法とみなされてしまいます。
過去には大手企業でも多くの企業で「追い出し部屋」などと呼ばれる部署が相次いで設置されたこともあり、今年の1月に厚生労働省では対象となった大手企業に任意調査を実施して、その結果として「明らかに違法であったとはいえない」と結論づけており、注意するだけで終わっています。
今回のミクシィの人事異動の騒動については、現時点では広報担当者もはっきりリストラではないと否定しているわけですが、報道の影響も大きく、今後の対応を見守っていきたいと思います。
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