山本太郎議員が陛下に手紙、何が問題?
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憲法で天皇が政治的に無色であることを明確にしている
日本国憲法は、第1条において「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は主権の存する国民の総意に基づく」とし、第4条1項において、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」と定めています。
明治憲法下における天皇は「現人神」として神格化されたり、統治権の総攬(そうらん)者とされたりして大きな政治的権力が与えられていたことから、天皇の名のもとに軍国主義の暴走を許してしまい、第二次世界大戦の悲劇を招いてしまいました。その反省から、日本国憲法では、主権が国民にあることと、天皇が政治的に無色であることを明確にしているのです。天皇が国事行為を行うとしても、儀礼的・形式的な行為に止まり、しかも、「内閣の助言と承認」を必要とされます。
天皇の政治利用が問題に。請願法違反の可能性も
山本太郎参議院議員が、秋の園遊会において、天皇陛下に手紙を渡した行為は、その手紙の内容が原発に関することであったため、政治的に無色であるべき天皇を政治に利用する、あるいは巻き込むことになるのではないかという点で問題視されています。
山本太郎議員の意図はわかりませんし、どのような立場で園遊会に参加したのかも不明ですが、主権者である国民の選挙で選ばれる国会議員は、議論を戦わせながら国民のためにより良い政治を作り上げていく役割を担っています。それが議会制民主主義の基本であり、政治を動かしたいのであれば、立法府という国会の場で行うのが本来の姿です。
また、請願法という法律があって、「天皇に対する請願書は、内閣にこれを提出しなければならない」(3条2項)と定められていますので、山本太郎議員の行為は、この手続きにも違背している可能性があります。
そして、以上のような法的な問題点とは別に、そもそも園遊会という場に相応しい行為だったのか、といった指摘もあります。山本太郎議員の行為を擁護する声も一方ではありますが、ただ、原発事故により周辺住民が大変な苦痛を被っていることについて、いつも国民のことを考えておられる天皇御自身が相当に胸を痛めておられることくらい、容易に想像できるというものではないでしょうか。
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