「育児休業3年へ延長」によるメリットとデメリット
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育児休業の現状について
政府の成長戦略の一つとして、女性が復職しやすい環境を整える「育児休業3年へ延長」の施策が論じられています。労働基準法では、産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)、産後8週間(医師の勤務可能の診断がある場合は産後6週間)の間の女性の労動を禁じており、基準法通りの休職期間のみで産後8週間後すぐ職場復帰するか、その後の育児介護休業制度を利用し育児休業を取得するかに分かれます。現在の育児休業制度は、原則、子が1歳になるまでの1年間(ただし、例外的に父母が育児休業をずらして取得することにより、子どもが1歳2ヶ月になるまでの間で育児休業期間1年を上限として、育児休業を取得することができます)取得ができ、保育園の確保ができない場合は、最大1年6か月を上限として育児休業を取得できます。
「育児休業3年へ延長」による、従業員と企業のメリットとデメリットは?
育児休業を3年へ延長するメリットですが、従業員側としては、育児休業制度を利用することで出産による退職がなくなること、育児休業中に子どもを優先して生活設計ができることなどが挙げられます。また、企業側のメリットは、人材の流出が避けられること、従業員の企業満足度が上がることなどがあります。
反対にデメリットを見ていきましょう。従業員側としては、休業期間が延びることで現職復帰がさらに難しくなる懸念があります。また、育児休業を取得することで、時間短縮制度を利用して働く場合と比べると収入が減ってしまいます。また、企業側としては、本当に復帰するのか分からない従業員を抱えなければなりません。また、3年という育児休業期間中に時代の流れが変化していくことで、復帰時には労働市場での能力が低くなってしまっているかもしれない従業員を雇用しないといけなくなります。
女性の復職を活性化にするには、育児休業取得者の努力も必要
メリットだけを考えると魅力的な制度となりますが、労使双方がデメリットを補いあってプラス要因が大きくなるような取り組みをしなければ、育児休業取得後の復職が円滑にいくことは難しいと考えます。プラス要因を大きくするためには、会社側が制度をつくるだけでなく、対象となる従業員自身が休職中にスキルアップの機会を持ち続けたり、復職後のことを考え、育児を家族に協力してもらえる環境を整える努力が必要です。
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