国家戦略特区で雇用の規制緩和はどうなる?
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せめぎ合いの末、規制緩和からは後退
政府は、地域を限定して規制を緩和する「国家戦略特区」の具体策を公表しました。雇用に関しては、産業界から要望が強かった「ホワイトカラーエグゼンプション」(一定の条件を満たす労働者には残業手当を支払わなくても良い)と「解雇ルールの明確化」は、「全国一律なら緩和をできるが、特区だけでは競争条件が不公平になる」「最低賃金だって都道府県で違うのだから問題ない」といったせめぎ合いの末、見送られました。その代わり、外資系やベンチャー企業向けに、雇用ルールの相談に応じる組織を特区内で整備するとのことです。しかし、規制緩和からは後退と見えます。
諸外国では、金銭による解雇が一般的であるのに対し、日本ではそれが法律で認められていません。法人税が高いことと相まって、諸外国の企業が日本に進出しにくい原因にもなっています。このことを解決する手段ではあったのですが、なかなか規制の壁は厚いようです。
それでも解雇をめぐる規制緩和は進むか
確かに、特区内で規制緩和を実施した場合、特区の人と特区以外の人で労働基準法の取り扱いに差異が生じ、法律で守られる人と守られない人が出てしまうという矛盾はあります。厚生労働省は「全国一律なら反対しない」という姿勢のようですので、今回は見送りにはなったものの、政府はまだ諦めてはいないようです。
「正社員が解雇しにくいから、契約社員、アルバイト・パート、派遣などいわゆる非正規雇用者ばかりが増えて、結局、正社員が増えない。正社員を解雇しやすくなれば、逆に雇用する側も正社員を採用しやすくなる」というのが賛成側の意見です。これに対し、反対意見は「企業が労働者を解雇しやすくする方策であって、労働環境を悪化させるだけ」というものです。
TPPでも日本の解雇規制について緩和が要求されるでしょうし、今後も雇用をめぐる規制緩和からは目が離せません。
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