産業競争力強化法が企業経営に及ぼす影響
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成長戦略の中核をなす規制緩和を推し進める
今年10月15日、政府は「産業競争力強化法案」を臨時国会に提出しました。これは「アベノミクス3本の矢」における3本目、すなわち成長戦略の中核をなす規制緩和を推し進めるための法案です。
産業競争力強化法の基本理念は「事業者が、経済事情の変動に対応して、経営改革を推進することにより、生産性の向上及び需要の拡大を目指し、新たな事業の開拓、事業再編による新たな事業の開始又は収益性の低い事業からの撤退、事業再生、設備投資その他の事業活動を積極的に行うこと」を国が積極的に支援するというものです。
成長分野を後押しする一方、競争力のない企業や業界には撤退を促す
「新たな事業の開拓」に関しては、新しい事業分野に新規参入したい企業が法規制に尻込みしないよう、規制がどの範囲まで適用されるかを政府が認定する仕組みを設け、新規事業者の創業支援も積極的に行うという方向性が示されています。
一方で、既存の事業者については、「事業再編による新たな事業の開始又は収益性の低い事業からの撤退、事業再生」などを促進します。このことは、競争力の低下している事業分野における企業再編を加速させ、競争力のない事業について撤退を促すことによって、成長の見込める分野に事業者が転進することを後押しすることを意図しています。
つまり、この法案が目指しているのは、成長が見込める分野の企業を後押しして収益力を高めるとともに、競争力のない企業や業界の縮小によって適正な産業構造を再構築するということです。
よって、自身が関わっている業界が停滞している業界であれば、事業再編や事業撤退などによって事業方向性(継続性も含めて)が大きく変わってしまう可能性がある反面、成長が期待される事業分野であれば、今後、大幅に飛躍できるかもしれません。
事業構造を柔軟に、かつ迅速に変化させていくことが重要
このような状況下で事業者がなすべきことは、時代の流れを適切に見極めて、事業構造を柔軟に、かつ迅速に変化させていくことです。進化論のダーウィンが言ったとされる言葉に「強い者が生き残ったわけではない。賢い者が生き残ったわけでもない。変化に対応した者が生き残ったのだ」というものがありますが、これからの経営に求められるのは、まさに「変化に対応」することです。経営者は社会の動きを敏感に察知し、事業の方向性のかじ取りを誤らないようにする必要があります。
そのためには、自社の能力を客観的に判断する視点や、経営環境を取り巻く社会的な要因に対する情報収集や見極めが求められます。それらについて、経営者個人の力で対応することはとても難しいことなので、積極的に外部の知識やノウハウを活用することも考えるべきでしょう。
弁護士と中小企業診断士の視点で経営者と向き合うプロ
舛田雅彦さん(札幌総合法律事務所)
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