あなたは「名ばかり管理職」?判断する3つの要素
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残業代を支払われない「名ばかり管理職」が以前から社会問題に
労働基準法第41条で「管理監督者については時間外及び休日労働の割増賃金を支払わなくても良い」とされています。しかし、管理監督者といっているものの、その定義については実にあいまいでした。過去の判例の積み重ねから推測するしかなく、都合良く解釈している会社が多く見受けられ、残業代を支払われない「名ばかり管理職」が以前から社会問題化しています。
平成20年1月東京地裁「マクドナルド事件」の判旨では、「店長は『管理監督者』に当た らず、残業代を支払わなければならない」とされ、非常に大きな反響を呼び、衝撃を与えました。
また、先日も、スーパーのヨークマートの店舗で働いていた元男性社員が、「管理監督者ではないのに残業代が支払われていない」として残業代の支払いを求めた訴訟で、同社が残業代など720万円を支払ったことが明らかとなりました。
名ばかり管理職かどうかを判断する3つの要素
そこで、厚生労働省としても平成20年9月に行政通達を出し、小売店、飲食業等の 管理監督者の範囲が適正化されるよう、3つの要素を判断材料として提示しました。
1、「職務内容、責任と権限」について。経営者と一体的な立場として人事権を持っている。
2、「勤務様態」について。労働時間管理をされない、ということから、遅刻、早退等をしても賃金控除をされない。また、労働時間に関する裁量権を持ち、会社から配布されるマニュアルに従った業務が大半を占めない。
3、「賃金等の待遇」について。基本給、役職手当が相応しいものが支払われている。残業代が支払われる部下よりも年収が下回っていない。
すべてに該当しなければ、「名ばかり管理職」の可能性があります。
2年分の残業代を支払うケースも。会社にとっては痛手に
会社にとっては、上記をすべて満たしていれば「100%安心」ということではなく、あくまで実態がどうかが問われます。「課長だから残業は支払わない」とした場合、名称は「課長」でも、実態として全く権限が無かったりすれば、「名ばかり管理職」として労働基準監督署から是正勧告を出されかねません。
労働基準法において、賃金の時効は2年と定められているため、2年分の残業代の支払を求められてしまい、経営上、大きな痛手を被ります。会社は管理監督者の運用を十分注意して行いましょう。
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