アベノミクスによる「円安」と「株価上昇」はいつまで続く?
2012年末から2013年春の株価・為替の動き
2012年末から2013年春にかけて、株式投資や外貨投資を始めたまたは再開した人も多いのではないでしょうか。
野田前首相の衆議院解散発言から5カ月あまり。相場動向は比較的分かりやすいものでした。この間、日経平均は約1.5倍上昇、為替は約20%円安が進行しました(表1参照)。
◆表1 衆議院解散発言直前と現在の株価・為替の比較
日経平均 | 1ドル | 1ユーロ | |
11月14日野田前首相衆議院解散発言直前 | 8,864.73円 | 80.240円 | 102.190円 |
4月16日 | 13,382.89円 | 97.531円 | 128.522円 |
差 | 1.51倍 | 1.22倍 | 1.27倍 |
2013年2月中旬のG20財務大臣・中央銀行総裁会議で「競争力のために為替レートを目的としない」といった旨の声明があり、円安の進行が一時的に静まり、1ドル約96円台、1ユーロ127円台をピークに頭打ちとなっていました。しかし、黒田総裁の就任、そして就任後初めて行われた4月3日、4日の日本銀行金融政策決定会合で決まった「質的・量的金融緩和政策」が報じられると、日経平均は2日間で1,000円近く上昇し、為替はそれまで頭打ちとなっていたレートをあっさり超えて円安が進み、1米ドル100円目前、1ユーロは131円を超える水準まで進行しました。
円安・株高は少なくとも夏までは続く?
では、この円安・株高はいつまで進むのでしょうか、いくらまで進むのでしょうか?
「大企業を中心に夏のボーナスが大幅に増えた」「高額商品が売れている」という景気のよいニュース報道が続き、多くの国民が「世間の景気がよくなっているらしい」と感じられるムードが続くことが条件で考えてみます。
4月17日に内閣府から発表された消費者態度指数(一般世帯)についても雇用環境、耐久消費財の買い時判断も3カ月連続で前月を上回り、1年後の物価を上昇すると答えた人の割合が71.8%と、前月比で増加していることからも、株高・円安の局面が続きやすい下地はあるようです。
「7月の参議院選挙直前の夏のボーナスシーズンを前に景気失速感を感じさせたくない」「2014年4月の消費税引上げの判断材料となる2013年4月~6月の経済動向は非常に大切」と政権は考えているでしょうから、少なくとも夏まではこの流れが続くのではないかと予想しています。
参議院議員選挙の結果、自民・公明が過半数の議席を獲得し、安定政権が実現すれば、さらにこの局面が長く続く可能性が高まるでしょう。また、9月7日には、2020年の夏のオリンピック開催地が決定します。仮に、東京に決定すると更に勢いがつくかもしれません。
株価・為替に影響を与えかねない、今後の国内および世界の動向
一方で、懸念材料も多々あります。例えば、北朝鮮の動向、キプロス・スペイン・イタリア等のユーロ圏の国々の財政不安などが挙げられます。
ただし、大局を予想しつつも、世の中の空気を大きく変える事件や出来事は起こるものですので、日々のニュース、特に海外ニュースには注視しておきたいものです。
参考までに、株式、為替の動向に大きな影響を与える可能性のある世界的な主な予定は以下のとおりです。
7月19?20日 G20財務相・中央銀行総裁会議(モスクワ)
9月5?6日 G20首脳会議(サンクトペテルブルク)
10月10?11日 G20財務相・中央銀行総裁会議(ワシントンDC)
欧州や新興国等を中心に、金融緩和政策に対する不満がくすぶっており、これらの会議の声明は要チェックです。また、会議声明や海外要人の発言に対し、安倍首相、黒田日銀総裁の説明・発言に「力強さ」がなくなったときは特に注意です。
そして、国内の経済指標や日本銀行の金融政策決定会合の動きにも注目しましょう。特に注目したい経済指標の概要・発表時期は以下のとおりです。
■景気動向指数
経済活動で重要かつ景気に敏感な指標の動きを統合して、景気の現状把握および将来予測に資するために作成された統合的な景気指標。内閣府が毎月、調査・公表。2カ月後の上旬に速報値、中旬に修正値が発表されます。先行系列、一致系列、遅行系列がありますが、特に先行系列に注目。CI値が前回調査に比べて、数値が上昇していると景気回復(拡張)局面とされる。
■日銀短観
様々な業種・規模の企業経営者を対象に自社の現況、先行きの見通しについて行うアンケート調査。日本銀行が年4回、調査・公表。2013年の公表時期は4月1日、7月1日、10月1日、12月中旬。前回調査に比べて数値が上昇していると景気回復(拡張)が進んでいると判断できます。
■GDP
一定期間にその国で作り出された財・サービス等の付加価値の合計。内閣府が四半期ごとに調査・公表。約50~60%を個人消費が占めています。公表時期は以下のとおり。
一次速報 | 二次速報 | |
1~3月期 | 5月16日 | 6月10日 |
4~6月期 | 8月12日 | 9月9日 |
7~9月期 | 11月14日 | 12月9日 |
10~12月期 | 2月17日 | 3月10日 |
なお、経済指標は実際の数値の改善・後退も大切ですが、機関投資家、アナリスト等の予測数値と比べてどうなのかの方が相場動向に影響を与えます。また、日本銀行の金融政策を決める会合は年14回開催されますが、2013年の今後の日程は以下のとおり。金融政策の転換、後退、強化等が相場に影響を与えることもあります。
5月21日・22日、6月10日・11日、7月10日・11日、8月7日・8日、9月4日・5日、10月3日・4日・31日、11月20日・21日、12月19日・20日
円安は物価上昇の要因にも。家計の見直しも必要に
最後に。株高・円安ができるだけ長く継続してほしいと期待する声も多いですが、円安は物価上昇の要因にもなります。周りを見回すだけでも、円安等の影響を受けて、ガソリン、電気・ガス代、小麦製品、食用油、紙製品の値上がりしています。また、自賠責保険、傷害保険、貯蓄性が高い保険の保険料も高くなっています。消費税増税、円安等により物価が上昇し、家計負担も増加することが見込まれますので、株式・為替の投資だけでなく、家計の見直しにも気を配ってください。
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