TPP関税撤廃が描く日本の未来
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日本は全体の品目の75%~80%の関税撤廃品目を提示?
9月21日までに開かれた環太平洋経済連携協定(TPP=Trans-Pacific Partnership)の首席交渉官会合は、高度の政治的判断に今後の交渉を委ねることで閉幕しました。日本は全体の品目の75%とも80%ともいわれる関税撤廃品目を提示したとも報道されていますが、厳格な守秘義務の締結により、その実情は明らかにされていません。関税については参加各国の国内産業にとって死活問題であるため、今後の交渉を固唾を飲んで見守ることになりそうです。
関税撤廃でGDPで約3.2兆円増。しかし、農林水産業では…
なぜ、このTPPがこれほどまでに話題になるのかというと、その大きな理由の一つは輸出企業にとっては、またとない追い風になるという大きなメリットがあるからです。反面、輸入増加に伴う国内産業に対する打撃を考えると、TPPはまさに両刃の剣といっても過言ではありません。
関税撤廃によるメリットは、政府によると2010年と比較してGDP(国内総生産)で約3.2兆円増と試算されています。これに対し農林水産業で約3兆円の減少を見込んでおり、特に農業従事者にとっては看過できない状況が予想されています。
技術の海外流出を止め、業界の力を高めることが生きる道
関税撤廃による弊害として、安い外国産農産物が大量に日本に流入し、現状でも40%程度とされる自給率は格段に下がると予想されています。これを阻止しようと農業団体などが先頭に立ち、TPPの大反対運動をしているのです。反面、現在、日本の一部農産物は高く海外へ輸出されています。リンゴ1個1,000円~2,000円、イチゴ1パック2,000円~3,000円などの価格での販売の報道も見かけるほどです。
世界で高値で売れる日本産農産物や競争力を高める工業製品など、関税撤廃で良いことも際立つTPP。しかし、一方で安い輸入品が大量に流入するだけではなく、日本の技術が海外へ移転することで、海外で生産された農産物や工業製品が日本に輸出されるということが常態化されてしまいかねません。これでは日本の業界は衰退してしまいます。
単に輸出入に有利不利を唱えるばかりでなく、すでに日本の技術が全世界に流出されている事実も考慮すると、まずは、あらゆる分野の技術やノウハウの海外流出を止めることが先決です。でないと、TPPは日本を苦しめるだけのものになってしまうかもしれません。
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