雇用調整助成金の厳格化で解雇トラブル増える?
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雇用調整助成金、リーマンショック前の通常時の基準に
厚生労働省は、今年の12月から雇用調整助成金の支給を厳格化し、リーマンショック前の通常時の基準に戻すことを発表。雇用調整助成金は、リーマンショック後の急激な雇用情勢の悪化により支給基準が大幅に緩和されましたが、その後、時代の流れとともに徐々に厳しくされ、ほぼ元の基準に戻ることになりました。これまで緩和されていた基準に助けられてきた中小企業は、他の中小企業支援策の縮小傾向もあいまって経営危機に陥る恐れもあり、地域経済にも大きな影響を与えることになるかもしれません。
雇用調整助成金は、不況時に従業員を解雇せずに一時的な休業にとどめた企業に対して、休業手当の一部を国が補填するという制度です。現在、数多くの企業が利用しており、12月から改正される内容について把握しておく必要があります。
解雇される人が増加し、解雇トラブルを招く
これまで、企業は従業員を休ませて雇用調整助成金をもらい終えた後、すぐに次の雇用調整助成金を求めることが可能でした。しかし、改正される12月からは、いったん雇用調整助成金を受け取った企業は、支給が終了してから1年間は再度の申し込みができなくなります。業績が回復せずに雇用維持が厳しい中でも、この助成金制度になんとか支えられていた中小企業も多くありますが、支給基準が厳しくなってしまえば「解雇するしかない」と安易に考えてしまう経営者もいるでしょう。そうなれば解雇される人が増加し、解雇トラブルを招くことも予測されます。
解雇トラブルを防ぐため、まずは4要件の理解を
中小企業においては、労務リスク対策ができていないところも少なくありません。まずは、解雇に関する基本的な知識を押さえておくことが大切です。今回のような業績悪化によっての人員整理のための解雇(整理解雇)には、基本の4要件があり、それらを満たしていない解雇は原則として無効と判断されることがあります。その4つの要件とは(1)人員整理の必要性(2) 解雇回避努力義務の履行(3)被解雇者選定の合理性(4)解雇手続の妥当性です。仮に解雇するとしても、これらの4つの要件を理解し、できる限りのことを行った上で専門家に細かいところまで相談しながら慎重に進めることが、トラブルを未然に防ぐために重要といえるでしょう。
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