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精神科医が考察する「道徳の教科化」による期待できる効果

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スクール・習い事

政府の教育再生実行会議が「他者への理解や思いやり、規範意識」などを育むために教科化が必要であるとした提言を行い、文部科学省が「道徳の教科化」に向けて検討を始めました。「道徳の教科化」については賛否両論があるようですが、これまでに思春期・青年期の精神医療に携わってきた一精神科医の立場としては、非常に有用な政策ではないかと思います。ただし、道徳教育の内容については十分な検討が必要であることは言うまでもないことです。

思春期や青年期の心の問題は、多くの場合、自分の存在価値に不安を感じ、どこに向かって進めば良いのかがわからない心の葛藤の中で、様々な問題を引き起こします。その根源をたどると、そこには「基本的安心感の欠如」と「道徳的価値観の欠如」があります。

親の心が不安定で、自分の不安を子どもにぶつけたり、「子どもが頑張っていないと受け入れられない」といった条件付きの愛情しか注げなかったりすると、子どもの心に大きな不安を作ります。それが「基本的安心感の欠如」となり、問題を引き起こす要因へとつながります。

もうひとつは「道徳的価値観の欠如」です。最近は多様な価値観の中で、大人の道徳的価値観も曖昧になってきています。そうした大人の中で育てられた子どもには、なかなか道徳的価値観が育ちません。道徳的価値観に欠け、人としての目指すべき方向がわからない子どもは、本能的な行動や衝動的な行動に走る傾向にあります。言い換えるならば、相手の心を思いやる力、自分を抑制して耐える力、自立心などが弱くなります。

このような道徳的価値観の欠如した子どもへの精神医療は大変です。人として社会生活をしている限り道徳的価値観は当然理解しているものだろうと考える土俵にないわけですから、常識的な助言やカウンセリングが通じません。青少年であっても、もう一度幼い子どもを育てるような関わりが必要になります。その中で、徐々に道徳的価値観を教育し、人生を立て直すように導かなくてはなりません。

道徳的価値観とは、本来、誰もが心の奥に持っている人間としての素晴らしい特性です。その特性は教育を通して言葉として学び、心を震わせるようなエピソードなどを通して感じ、そのような刺激の中で目覚めてくるものです。道徳教育を重んじない教育環境の中で、なかなか目覚めるものではありません。

ですから、道徳を教科化し、教育として意識的に取り組むことは、その内容が伴ったときには子どもの様々な心の問題の予防になることは十分に期待できます。それはさらに、誰もが道徳的価値観を共有しているという、安心できる社会の構築にも役立つ可能性を秘めているようにも思います。

“心の医療”のプロ

泉和秀さん(いずみハートクリニック)

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