婚外子相続格差は違憲 民法改正へ
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婚外子の相続分を嫡出子の半分と定めた民法が「違憲」に
9月4日、注目されていた裁判の判断が下されました。結婚していない男女の間に生まれた非嫡出子(婚外子)の相続分を嫡出子の半分と定めた民法の規定が、法の下の平等を保障した憲法に違反するかが争われた家事審判の特別抗告審で、最高裁大法廷(竹崎博允裁判長)は、規定は「違憲」との決定を示しました。
違憲性が争われたのは、2013年7月に死亡した東京都の男性と、同年11月に死亡した和歌山県の男性らの遺産分割をめぐる審判でした。明治31年に施行された民法において、嫡出子と非嫡出子(婚外子)の最大の違いは法定相続分が異なるということで(民法900条4号)、非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1です。
いずれも家裁、高裁は規定を「合憲」と判断し、婚外子側が特別抗告していました。今年7月10日に開かれた弁論で、婚外子側は「どのような事情の下に生まれるかは選択の余地がないのに、差別を受けるのは憲法に違反する。司法による救済が図られるべき」と主張。これに対し、嫡出子側は「法律婚主義の下で規定には合理的根拠があり、改正の必要があるとしても国会の立法作業に委ねるべき」として、規定は「合憲」であると反論していました。
今回の違憲判断で「家族の在り方」にも多大な影響?
昔から「嫡出子と非嫡出子で相続分に差があるのは差別」と、その規定の合憲性(平等原則を定める憲法14条違反)が争われてきましたが、最高裁判所大法廷は、平成7年に法律婚を尊重するためのもので不合理な差別ではく「合憲」と判断し、小法廷もこれを踏襲してきました。
しかし今回は、最高裁判所まで行きつき、さらに、大法廷で口頭弁論が開かれたことで過去の判例を変更し、「民法の規定は違憲」として高裁の決定を破棄する可能性があると予想されておりました。
最高裁が法律の規定について「憲法違反」と判断したのは戦後9件目のことです。官房長官の発言もあり、「子の人権を守る」立場からも国会は民法改正に動き出しそうです。大きく舵を切った感のある、今回の違憲判断。司法書士の「相続登記業務」のみならず、「家族の在り方そのもの」にも多大な影響が及びそうです。
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