企業の海外戦略 「ポスト中国」赤丸急上昇中は?
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?「チャイナ+ワン」時代の海外戦略の動向
これまで製造業を中心として、労働賃金の安さと市場成長性の面で中国は最も魅力的な投資先と考えられてきました。しかし、尖閣諸島の問題などによって日中関係が急速に冷え込んでことで地政学的リスクを抱えるようになり、また、最低労働賃金の急激な上昇といった経済環境の変化に対応して「チャイナ+ワン」が叫ばれるようになりました。このような状況を受け、日本企業は実際どのような戦略転換を図っているのでしょうか。
昨年末に公表された株式会社国際協力銀行による「わが国製造企業の海外事業展開に関する調査報告」で、その一端を垣間見ることができます。これは、1000社を超える製造企業にアンケート調査をした結果をまとめたものです。その中の「中期的(今後3年間程度)有望事業展開先国・地域」を見ると、第1、2位は変わらず中国、インドですが、その後に、インドネシア、タイ、ベトナムと続きます。
1位を維持した中国ですが、得票率では予想通り前年度より1割低下。インドは前回と同じ順位で、インドネシアが5位から3位に躍進。また、ミャンマーが前回19位から10位に大躍進しました。ちなみに韓国は、前回11位、今回12位でほぼ変わらずでした。
大本命はインドとタイ。赤丸急上昇中の3つの国は?
これらを見ると、「ポスト中国」の大本命はインドとタイです。インドは、中国に匹敵する12億人の人口を誇り、経済成長率も9%前後と高く、中間所得層の増加も顕著で市場的な魅力があります。一方、タイは少し事情が異なり、進出先としては古参地域で、すでに多くの企業が進出済みです。中国と同様、賃金上昇が高いレベルに達しています。むしろ「タイ+ワン」が検討されているのが現状です。
そして、赤丸急上昇中なのが、インドネシア、ベトナム、ミャンマーです。インドネシアは現地市場の成長が著しく、6%前後の成功率を誇っています。また、ベトナムは、2000年代後半に「チャイナ+ワン」の候補として世界的な注目を浴びました。勤勉で親日的な国民性で、7%前後の高い成長率も魅力です。また、前述のランキングで10位に躍進したミャンマーも忘れてはいけません。
新たな地域への進出に際しての課題
インド、インドネシア、ベトナムなど、一般に新たな地域への進出に際しての課題としては、未整備な社会インフラへの対策、国毎に異なる法制税制への対応、そして、その国特有の文化に対応した人材を含めた経営組織の構築が挙げられます。また、中にはNGO「トランスペアレンシー・インターナショナル」が公表する腐敗認識指数で低位の国(つまり、贈収賄リスクの高い国)も含まれるため、そのリスクにも対応する必要があります。詳細な現地情報の収集を行い、明確な経営目標を持って戦略を立案することが重要です。
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