靖国参拝批判は内政干渉にあたらないか?
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国連憲章で定められている「内政不干渉の原則」
日本の総理大臣や政府要人が靖国神社を参拝することに対して、近隣諸国が批判の声を上げています。国家は、国内管轄事項について自由に処理できる権利を持ち、他国はその事項に干渉してはなりません。これを国際法上、「内政不干渉の原則」といい、国連憲章2条7項においても「この憲章のいかなる規定も、本質上いずれかの国の国内管轄権内にある事項に干渉する権限を国際連合に与えるものではなく、また、その事項をこの憲章に基づく解決に付託することを加盟国に要求するものではない」と定められています。ただ、他国の靖国参拝批判が内政干渉にあたるかどうかについては、靖国参拝のいかなる点が問題となっているのかを理解することが不可欠です。
靖国参拝をめぐる3つの問題点
まず一つ目の問題は、日本国憲法が定めた政教分離の原則に反するのではないかというものです。日本の総理大臣や政府要人が公人の立場で靖国神社を参拝するとなると、特定の宗教団体のために税金が使われ、これを支援するとも捉えられるため、政教分離の原則に反するおそれがあります。
次に、日本国憲法は戦争放棄を柱とする平和主義を掲げており、これに抵触するのではないかということが問題視されています。戦死した軍人と軍関係者を神として祀る靖国神社は、戦前においては軍国主義のシンボルとみなされていました。政府要人が靖国神社を参拝することは、軍国主義を賛美することにつながるのではないかということが懸念されているのです。
三つ目の問題点は、靖国神社には日本を戦争に導いた責任者とされるA級戦犯も合祀されていることから、総理大臣や政府要人が参拝することは日本の戦争責任を否定することになるのではないかというものです。
内政干渉にあたるかどうかは絶対的には言い切れない
第一の問題については国内管轄事項であると説明しやすく、近隣諸国がこれを理由に靖国参拝を批判するのであれば内政干渉にあたると主張することが可能でしょう。しかしながら、二つ目や三つ目の問題に関しては純粋に国内管轄事項と言い切れない側面があると考えられており、近隣諸国が批判しても内政干渉にはあたらない余地が出てきます。
社会がますますグローバル化している今、靖国参拝に限らず、ある問題が国内管轄事項といえるかどうか、すなわち、内政干渉にあたるかどうかについては、その時代に応じた相対的なものとならざるを得ないでしょう。
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