老齢年金の「繰り下げ受給」は75歳まで可能 40代・50代が今知っておきたい年金の選択肢
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Bさんは52歳、都内の金融機関勤務。60代の親が「老齢年金の受け取り方で迷っている」と話しているのを聞き、初めて繰り下げ受給という制度を調べたと言います。「65歳になったらもらうものだと当然のように思っていた。自分で受け取り時期を選べるとは知らなかった」というのが最初の感想でした。こうした反応は、同世代の多くが共有しているものです。
結論から言えば、繰り下げ受給とは「もらい始めを遅らせることで、年金額を増やす制度」です。2022年4月から、老齢年金の受給開始を75歳まで繰り下げることが可能になりました。繰り下げる期間は1ヶ月単位で選ぶことができ、1ヶ月あたり0.7%の割合で年金額が増えます。75歳まで繰り下げると、65歳で受け取り始める場合と比べて84%増の年金を一生涯にわたって受け取ることができます(日本年金機構「年金の繰下げ受給」)。繰り下げが有利かどうかは「いつまで生きるか」「65歳以降の収入源があるか」によって変わりますが、選択肢として把握しておくことには誰にとっても意味があります。
実際に繰り下げを選んでいる人はごくわずかです。令和5年度の統計によれば、繰り下げ受給を選んでいるのは国民年金で全体の2.2%、厚生年金で1.6%にとどまります(厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」)。老齢厚生年金の平均月額は男女合計で約15万1千円(厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」)ですが、それを84%増やせる制度がほとんど使われていないのは、認知度の低さが大きな原因です。
繰り下げが有利になるのは長生きした場合です。75歳まで繰り下げた場合、累計受給額が65歳から受け取り始めた場合を上回るのは86歳11ヶ月以降(約87歳以降)とされています。令和6年(2024年)簡易生命表(厚生労働省/a>)によれば、男性の平均寿命は81.09歳、女性は87.13歳です。女性にとっては損益分岐点(86歳11ヶ月・約87歳)と平均寿命が近く、繰り下げを選ぶ意義がより明確になりやすいと言えます。70歳まで繰り下げた場合は42%増で、損益分岐点は81歳11ヶ月前後です。
一方、繰り下げには注意点もあります。まず、65歳以降の生活費をどこから確保するかが前提になります。貯蓄や他の収入がなければ繰り下げは難しくなります。また、配偶者や子の加算として受け取れる「加給年金」は、繰り下げ期間中は支給されません。さらに、年金額が大きく増えた結果として税金や社会保険料の負担も増えるため、手取りの増加幅は額面ほど大きくならないことがあります。「84%増」という数字だけを見て判断するのは禁物です。
40代・50代のうちは「年金は65歳から受け取るもの」という前提で老後の資金計画を立てがちです。しかし、働き続ける意思や他の資産状況によっては、繰り下げ受給が老後の家計設計を大きく変える選択肢になりえます。年金の受け取り方は、老後の収入における最も大きな変数のひとつです。知っているかどうかだけで、生涯の手取り合計が変わってくるのです。
まず取り組めることは、自分の年金見込み額を「ねんきんネット」で確認することです。「いくらもらえるか」だけでなく、「いつから受け取るか」を試算する機能もあります。40代のうちから大まかな見通しを持つことで、老後の準備を余裕のあるうちに始めることができます。繰り下げを選ぶかどうかの最終判断は60代になってからでも遅くありません。ただ、選択肢があることを知っておくのは、今すぐできることです。
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