「五感」と「思考」を理解して心の作用を制御する古典ヨガの智慧と実践
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布団に入ってからも心が落ち着かず、もやもやして寝つけない夜はありませんか?心というものは目には見えませんが、内面や感情、そして肉体への影響も大きいものです。人間は1日に数千、数万回も思考している、という研究結果もありますが、無意識に起こる思考は数えられるものではなく、絶え間ない川の流れのようなもの。心とは、いったいどのように作用しているのでしょうか?数千年前から伝承されている古典ヨガの教えの中から、思考のシステム「アンタカラナ」を紐解きます。思考を俯瞰し、心身を整える実践をはじめましょう。
思考は「五感」で外界を認識するところから始まる
「アンタカラナ」を解説する前に、予備知識として知っておきたいことは「五感」です。サンスクリット語でパンチャニャーナエンドリアと言われ、1つの感覚器官を指します。日本語で言うと、禅の教え『般若心経』にある「眼耳鼻舌身(げんにびぜつしん)意(い)」がわかりやすいですね。
人間は目で見る、耳で聞く、鼻で嗅ぐ、舌で味わう、皮膚で触れるといった「五感」によってまず外界を感知し、瞬時に思考が起こります。思考のシステムである「アンタカラナ」は、 「眼耳鼻舌身(げんにびぜつしん)意(い)」の「意」にあたるものです。
無意識に瞬時に起きている思考のシステム「アンタカラナ」とは何か?
古典ヨガは、心身を鍛え健康に導く肉体の練習法だけではく、心を整える哲学や教義が豊富です。前回の記事では、人間の体は5つの鞘(さや)で出来ていると言うヨガ的解剖学を説明しています。
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目に見えない心の動きを「アンタカラナ」という1つの内的な働きとしてわかりやすく紐解いているのは、思考を理解し心の作用を制御しようとするものです。
思考はどういうメカニズムで働くか?
さて、「アンタカラナ」の1つの働きは、前後しながら瞬時に思考を起こします。
①マナス=物事を五感で感知
②ブッディ=識別
③チッタ=記憶
④アハンカーラ=判断
この4つの働きを「アンタカラナ」と言います。
例えば、「空腹時に美味しそうなカレーの匂いがした」場合。
①いい匂いだ ②お腹が空いている ③これは絶対美味しいカレーだ ④よし食べよう
②でも待てよ、状況判断をしよう ③夜遅く食べると胃がもたれるから ④時計を見る
①22時か ②食べるには遅いな、胃腸に負荷がかかるな ③でも少しなら大丈夫だったな ④食べるか食べまいか…という具合です。
「アンタカラナ」は、このように五感で外界を感知しては、思考を生み出しています。
同じ状況でも、人によって思考が違うのはなぜ?
また、アンタカラナの働きである、ブッディ(識別)とチッタ(記憶)も、成長過程での経験や学習によって異なります。苦手が多いと思考が悩みになったり、解決せず脳が疲弊したり、心身が不調をきたすことも少なくありません。肉体のみならず精神的にも健康で豊かな人生を送るために、古典ヨガの修習が伝承されています。その指針となる、心の作用を制御するためには、自分がどのような二重性を持っているのか気づくことも大切です。
思考を俯瞰する実践方法
ピアノが弾けるようになるまで練習を重ねるように、思考を判断するためにも練習が必要です。まずはアンタカラナの働きを理解し、いつの間にか身についてしまった好き嫌いや思い込みなどに気づきを持ちます。その実践練習の一つは瞑想です。
腰をたてて座り深呼吸を続けることで、主体的に行為する状態から客観的に俯瞰する状態に移行します。静まった状態で、何かを探そうとせず、五感での外界の感知と思考(アンタカラナ)が起きている自分自身を俯瞰しましょう。気になっていることに気づいたら、その原因に何かしらの二重性があるかも知れません。対処法もありますが、まずは、川の流れのように感覚も思考も変わっていくことに気づきます。
まとめ
古典ヨガは、仏陀が修行していた数千年前から、時代や国を問わず変わらない人間の特質を理解していました。数千年後の子孫たちが真に健康であってほしいと、現代人の祖先である先人が遺した文化遺産です。人生100年時代、古典ヨガの智慧で心身を整え、心豊かな人生を送りたいものです。
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