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ファクトチェックの考え方とは?氾濫する情報の中に埋もれる現代人は、何を判断材料にすればいい?

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国のコロナ対応に関して指針となる感染状況。国の発表に基づいて、感染者数や重傷者数、病床使用率、年代別・地域別の状況やその推移が、毎日あらゆるメディアで取り上げられています。

これまで、「未知のウイルスはどのようなものか」「治療薬やワクチンは効くのか」「その根拠は?」など、医療や政治の専門家が解説する情報や、日々更新されるデータから知識を得ようと、多くの人々が注視してきました。

大きな決断となる緊急事態宣言の発出や期限を検討するときに、目安とされるあらゆる情報。こうした基準となる情報に根拠が見いだせないとしたら。もしくは数字そのものは正確であっても、読み解く方法や伝わり方が間違っていたとしたら…。

2021年1月に1都3県に出されていた2度目の緊急事態宣言下、当初の期限を延長するかどうかというタイミングに、その根拠となる指標が修正されていたことが物議をかもしました。

東京都のある時点での病床使用率が約86%だったのが、翌週には約33%と大幅にダウン。これは、東京都と他の道府県の病床確保数の捉え方が異なっていたためで、厚労省の基準で病床使用率を算出し直した際に食い違いが生じたと報道されました。

これまでにもマスクやうがい薬の効能に対して、SNSだけではなく国や自治体の首長からも出された不透明な発言。たびたび報じられるこうした不確かな情報は、一部の商品の不足を招くなど消費生活にも混乱を与えました。

こうした事態を受けて、一部のメディアや解説が「ファクトチェック」(真偽検証)の必要性を説いています。世界的なベストセラー「FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」(ハンス・ロスリングほか著、日経BP社発行)も、再び購買数を伸ばしているようで、人々の関心も高いようです。

情報の海の中から正しいものだけを読み取り、思い込みによる誤った判断を回避するために、日頃から私たちは何を心掛けるべきでしょうか。研究開発プロデューサーの中喜隆さんに聞きました。

原理に着目して考えてみると、つじつまが合わないことが見えてくるもの。一次情報・発信元のチェックはもちろん、「地球は丸い」がフェイクとされていた歴史に学び、多数派の見解に対する反証の習慣づけを

Q:東京都の病床使用率のように、メディアが厚労省の発表をそのまま報道したことで混乱が生じました。結果に大きな違いがなければ問題がないと言えるのでしょうか?
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これまでのコロナ関係の報道に関しては、事故や災害などの報道と異なり、未知の部分があまりに多く、メディアも関係機関から提供された数字などを、そのまま報道するしかなかったのかもしれません。
どのような場合であっても、収集した事実を厳しく検証するという原則を踏まえるべきで、得た情報についても、訴える部分と言及しない部分とに分ける必要はあったと考えます。

例えば、東京都の病床使用率の数字の食い違いでは、その指標となる基準が統一されていなかったために、再度算出し直したという事実があったようですが、その経緯も含め正確に報道すべきでした。メディアがこの事実を意図的に大きく伝えなかったか、あるいは関係機関の不手際を非難するのみであったとすれば、こうした報道姿勢には問題があるように感じます。

これまでに経験したことがない状況下では、通常の情報解析の手順をある程度簡略にしても、速やかに数字を導き出す必要があったわけですから、こうした食い違いが生じたとしても無理はないのかもしれません。とはいえ、メディアは公平な立場で事実のみを伝えて、「判断は視聴者に任せる」といったスタンスを貫くことはできなかったのだろうか、という思いもあります。

あるデータに関して、事実と感情とを厳密に分けるということは、研究者の基本姿勢でもあります。
すでに発信した情報が誤っていた際にも、メディアはその事実と根拠を伝えることに努めるのみで、どこにも意図的な操作や主観を含むべきではありません。

Q:コロナが注目され始めた当初から現在に至るまで、多くの人が必ずしも根拠があるわけではない情報に振り回されました。災害やアメリカの大統領選などでひんぱんに話題に上がる悪質な「フェイクニュース」(虚偽のニュース)とはどのようなものでしょうか?
--------
昨今ウェブ上にあふれている情報の中には、意図的に作られた虚偽の話題が含まれている場合もあり、不特定多数によって、あたかも事実であるかのように拡散されるこのような情報は、一般的にフェイクニュースと呼ばれています。

正確な調査や検証に基づかない情報や事実誤認とは別に、悪意ある誹謗中傷などが含まれることもあります。

コロナ禍では、トランプ前アメリカ大統領が新型コロナウイルスの治療法として「消毒液の体内注射」を提案し大混乱を招いたケースや、大阪府知事が保険医協会から猛省を促されることになった「イソジンのうがい薬がコロナウイルスに有効」といった発言などが大きく取り上げられました。

驚くような発言がなされた時も、物事の原理に着目して考えてみると、必ずつじつまが合わないことが見えてくるものです。例えば、唾液を採取して検査する必要があるのに、うがい薬を口に含んでどうなるのか、とか。結果を導き出す過程に何らかの意図が含まれていないかどうかも、情報を読み解くときの要素の一つです。

こうして少し注意して見ていれば、それがフェイクかもしれないことは簡単に気付くように思いがちですが、果たしてそうでしょうか。

実は長期的な時間軸で考えた場合、世の中には、すぐには事実かどうかわからないということが思っている以上にたくさんあります。
極端な例で言うと、現在「地球が丸い」ということを疑う人はいませんが、何千年もの間、人類は「地球は球体である」ということを知らずに生きてきました。
古代、一部の賢者が異論を唱えたとしても、その時代の人にとっては〝フェイク〟とみなすほかありませんでした。

意図的であれ技術不足からであれ、事実が解明されないまま長い時間が経過したなら、その誤った思い込みは、この時代の人々にとっての真実ともなり得たのです。
自然科学の世界でも起こるこうした事例は、現代でも未知の分野で起こっているのかもしれません。

いずれにせよ、誤情報に惑わされないために大切なことは、どのような情報もフェイクとなる可能性を含んでいると知っておくこと。
また研究が進み裏付けがなされ、これまで信じられてきたものと異なる事実が明らかになったときには、これを速やかに開示できるかどうか、認識を柔軟に転換できるかどうかということではないでしょうか。

Q:人間の脳には異なる意見が見えにくくなる「確証バイアス」の心理があり、特にウェブ上ではその傾向が強くなると言われています。多くの情報をウェブから得る現代人ですが、こうしたリスクを回避するには?
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可能な限り正確なデータが欲しいときに、全ての情報を自力でチェックし収集できることが望ましいとしても、現実的ではありません。現代では研究・開発の現場でも、多くの情報をウェブから得ていますし、先人たちの研究や信用できる第三者のデータの上に、独自の研究を展開していくほかありません。

若い研究者を指導する場合、基本的な考え方として「車輪の再発明」という慣用句がよく使われます。つまり、すでに確立された技術や解決方法があるにも関わらず、何もかもを疑い、一から全てを自分で行おうとして膨大な時間とエネルギーをかけたところで、それまであったものと同程度のものしか作り出すことができない、という考え方です。

仕事上のことだけでなく、日常的にわからないこと、知りたいことがある場合にも、ウェブ上で簡単なキーワードを検索すれば容易に情報を得ることができますが、その中には不誠実なものも混在しています。もっと踏み込んで正確な判断をしたいときには、押さえておくべき基本的なポイントがあります。

第一に、集めた情報からある程度仮説が見えている場合でも、必ずその反証にもアプローチすること。大筋で結論が見えたとしても、あえてその反対の理論についても検証してみるということです。

例えばコロナ情報なら、当初メディアからの情報が限られていたために、「コロナは風邪のような症状」「若者は感染しても無症状のケースが多い」「飛沫感染はしないのではないか」などが大方の認識でした。
その時点ではまだ少数意見だった別の見方を少し探ってみれば、「風邪に似たウイルスなら飛沫感染もあり得るのではないか」「致死率は高いのでは」などという見解を示す情報がいくらか得られたはずです。

自分なりに未知の病気を理解し、どうすれば感染を防げるかを考えなければならないときに、この反証の考え方は、後に新たな事実が判明したときにも慌てずに済むような布石を打つことにもなります。

第二に、情報収集の際には一次情報を当たること。
できるだけ情報ソースをさかのぼって、研究機関・発信元・発言者に近い情報だけを参考にするということです。発信者が誰かわからない情報、明らかに内容が発信者の利益に資する場合などが疑わしいことは言うまでもありません。

それでなくても情報は、集約し整理し、広報するという工程を経るごとに、作業者の主観や意図が加わります。場合によっては事実と遠い結果へと導かれてしまうこともあるのです。

Q:企業活動において、商品開発やサービスの向上、マーケティングなどのあらゆる分野で、より正確な情報収集や分析が欠かせません。企業の情報収集・解析・情報発信の基本的な考え方は?
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企業が成長していくためには、今まで以上に科学的なデータに基づいた事業の展開が求められています。

私たちの研究所が、企業の依頼に基づいて研究結果などを提供するとき、データ上の数字だけではなく、その調査方法と、結果を導き出した科学的根拠をセットにして納品することを鉄則としています。

科学的なデータの扱いは、詳細であればあるほど良いというものではなく、正確さを期するあまりにデータソースを尊重し過ぎると、場合によってはまるで学術論文のようになってしまいます。実際には企業の情報収集・情報発信の方法は、その企業が取り扱う商品やサービスによって異なりますので、事業内容によっては目指す結果が見えにくく、かえって魅力を創出しにくいということにならないような解析技術が必要です。

モノによっては厳しい法令順守の制約もあります。
例えば「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(一般に「医薬品医療機器等法」「薬機法」)では、品質・有効性・安全性について正確な情報が求められます。
ほかの商品やサービスでも、実際に一般消費者にはそこまで厳密な情報は必要ないように思えても、企業がおざなりにできないルールがあるのです。

こうしたデータをもとに、企業が営業活動の傾向や対策を探る際に必要な論理的な考え方として、複数のデータやアンケートなどの情報から総合して結果を導き出す「帰納法」と、普遍的な事実やそれまでの実勢をもとに結果を推察する「演繹法(えんえきほう)」があることはよく知られています。

多くのデータやサンプルから傾向を導き出すときと、過去の実績の上に戦略を積み重ねるときなどでは、必要な情報や読み解き方も自ずと変わってきます。

また研究者の考え方では、解決すべき問題があるとき、一度それを理解できるところまで分解してみるという方法をとります。分解した要素を分析、仮説を立て、組み立てる、さらに分解、仮説…と繰り返すことで研究者の主観が排除され、客観性のある解決策が見えてくるのです。
企業活動でもこうした手法をとることで、誤った情報に振り回されることを回避することができるでしょう。

一方、一般消費者向けの広報の方法や内容には、科学的データに基づいた情報のみならず、ジェンダーや環境などのほか、あらゆる条件を想定して、誰にも不快な感情や誤解を抱かせない表現などが求められています。

今後、企業活動には正確な調査に基づいたデータとともに、人の思い込みや感情など心理に訴えるアプローチも必要となってくるでしょう。

Q:技術や商品に付加価値をプラスするための販促活動が、正確な科学的データに基づいたものかどうかは消費者にはわかりません。サービスや商品の価値を見極める際には、あまり意味がないのでは?
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日常生活の中では、確かに数字で表すデータそのものの正確さにあまり意味がないことも多いかもしれません。

子どもや家族との会話でよく口にする「みんなはこうである」と言うときの「みんな」とは、果たして何人のことでしょうか。

人が何かを判断するとき、例えばサンプルサイズ(1回の調査で調べた個体数)が3人であれば、そのうち1人(1/3)では少数派、2人(2/3)なら多数派という感覚のことです。
最小単位で考えると極端な例にも見えますが、多くの人がこうした感覚的なイメージを日常的に判断の参考にしていると言われていて、詳細なデータよりむしろこうした感覚をもとに判断することのほうが一般的かもしれません。

消費行動でも、多くの人が商品の成分表示や効果・効能を厳密に比較しているわけではありません。一部の過剰な広告にはウンザリしているということもあるでしょう。
むしろその商品を応援したくなる要素や、商品開発への思いなどに共感できるかなどが、購買意欲に大きく作用することがあります。

人が物事を判断するときのこうした感覚的な部分にこそ、実は科学的データの本来の役割があると考えています。

例えば、職人気質の生産者が無農薬にこだわって作り続けているトマトを流通させたいとき、「無農薬」のみをアピールしても、販路は広がりません。安全性を追求する一部の消費者以外には、「おいしさ」など、ほかの要素が伝わりにくいからです。

そこに科学的な研究から導き出した「糖度何パーセント」などの情報が加わるとどうでしょうか。
たとえその数字が厳密なおいしさをカウントするものではなくても、多くの消費者が選びたくなる要素のひとつとなるのです。

生産者や販売企業は、販売先の消費者のカテゴリーを広げることができますし、消費者も、よりよい商品を選ぶ機会が増えることになります。

生産者の思い、商品開発にかける情熱や苦労、歴史といったものは、数字やデータで表せるものではありません。
もともと備わっている商品価値を際立たせ、その価値を裏付けるものとして、科学的データの持つ本来の意義があると考えています。

中喜隆

日本の研究開発を効率的にアップデートする専門家

研究開発プロデューサー

中喜隆さん(ゼロ・イチ研究所株式会社)

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