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オンラインゲームで対戦する「eスポーツ」がリアルスポーツ以上に白熱? 経済や教育、国際理解にも一役

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リアルスポーツの大会の多くが、これまでと違う方法での開催を余儀なくされるなか、オンラインゲームの対戦を競技として捉える「eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)」の広がりが加速。世界的な競技人口の増加とともに、数々のイベントや世界大会・国内リーグが開催され、オリンピックの公式競技種目の候補にも浮上しています。

世界大会優勝者の高額賞金が話題になったことで一気に注目度が高まりましたが、オンラインゲームを個人で楽しむだけでなく、上級者やプロの競技を観戦・応援する文化は定着しつつあります。すでに街にはeスポーツ専用の競技場や観戦施設、eスポーツカフェなどが登場。学校教育でもeスポーツ専門コースを設ける通信制高校があるなど、浸透のスピードは驚異的です。

またウィズコロナ時代であっても、活発な交流が可能なeスポーツには期待も大きく、ゲーム業界だけでなく、あらゆる業種の企業が参入して経済活動が進められているほか、医療・福祉、国際交流などにも可能性が見いだされています。娯楽のみに止まらないeスポーツの魅力とは?プロチームWE-R1チーフプロデューサーでもある司法書士の寺本俊孝さんに聞きました。

リアルスポーツと異なるのは、そのフィールドがオンライン上であること。そこは仲間とコミュニケーションを取りながら、人種や言語、年齢、身体機能に関係なく公平に世界と戦える自由空間

Q: eスポーツを「スポーツ」とする要素はどのような部分でしょうか?一般のオンラインゲームとeスポーツとの違いは?
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「eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)」とは、スマートフォンやコンピューターなどの電子機器を使って行うオンラインゲーム対戦のこと。オンラインゲームと言うと、日本では「遊び」「不健康」「オタクがするもの」など、どちらかと言うとマイナスイメージが強いうえに、「屋外などで体を使って行うスポーツとは別物」との認識が一般的です。

欧米ではスポーツの定義を「一律のルールに従って行う競技」としていて、体を使うことのみに限っているわけではありません。たとえばチェスや囲碁、将棋などボード上で戦うものや、モータースポーツなども全てスポーツという認識になります。

サッカーやバスケットボール、野球などのリアルな集団スポーツでは、フィールド上で複数の選手が互いに連携して戦います。eスポーツの団体競技でも同じように、マイクを通してコミュニケーションをとりつつ役割分担をしながら、チームワークを駆使して相手チームと対戦します。

リアルスポーツと異なるのは〝そのフィールドがオンライン上である〟この1点だけです。

世界中には膨大な数の対戦型オンラインゲームが存在します。それぞれが多彩な世界観や特徴を持っているものばかりです。
50歳代以上の人にとって、〝テレビゲーム〟の娯楽性のイメージが根強いですが、リアルスポーツをそのまま仮想空間に再現したものがより抵抗なく、スポーツとして受け入れやすいかもしれません。

Q:eスポーツが注目され始めた背景や歴史は?
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コンピューターゲームは1980年代に登場し、当初はマイナスイメージがありました。しかし、その後一般家庭にインターネットの普及が進み、オンラインによるコミュニケーションが可能になりました。1990年代以降、〝生まれたときからデジタル機器が存在していた〟という世代を中心にゲーム人口が増加。オンラインゲームのイメージも特別なものではなくなりました。

さらに技術革新が進み高速通信が可能になると、オンライン上で協力して対戦するスタイルが定着。個人同士がつながり合うコミュニティーが生まれたことで複数が対戦する競技性が高まり、プレイヤーの中から優れたスター選手なども登場するようになりました。

自分で楽しむと同時に、そうした一部のスタープレイヤーの対戦を観たいというニーズも増え、「オンラインで競技を観戦する」と言う文化が生まれました。

この世代では、テレビよりもYouTubeをはじめとする動画サイトを観る習慣が定着しています。さらにコロナ禍で、野球やサッカーといったリアルスポーツの観戦が難しくなり、それぞれのスポーツ団体がオンラインでの興行に取り組みはじめたことも、eスポーツが注目されるきっかけの一つとなりました。

コロナ前の2018年は「eスポーツ元年」とも呼ばれています。それまでのeスポーツ3団体が一つになって、「一般社団法人日本eスポーツ連合」が設立され、日本でもようやくeスポーツが社会的に認知されはじめたのです。

Q:実際の競技はどのようにして行われているのですか?全国規模の大会などはあるのですか?
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たとえば対戦型オンラインゲームの「リーグ・オブ・レジェンド」(以下LoL)は、バスケットボールやサッカーといったリアルなスポーツを含めた競技人口比較でも、ここ数年トップ5入りを記録。世界的に、最もメジャーなeスポーツのひとつとして知られています。

このLoLは強力な5体の〝チャンピオン〟で構成、2つのチームが5対5で互いに相手の本拠地を目指して激突するチーム戦のゲームです。

LoLに限らず、さまざまなゲームの大会が世界中で行われ、その様子は配信もされています。国内でも、2019年の茨城国体で、国体史上初となるeスポーツ選手権を実施したことが大きな話題になりました。各都道府県の予選を突破した小学生から40歳代までの約600人が参加。「eFootball ウイニングイレブン2020」「グランツーリスモSPORT」「ぷよぷよeスポーツ」の3タイトルで、一般の部と小学生の部に分かれて日本一を競いました。

全国の高校生eスポーツチームを対象とした選手権大会も、軒並みスタート。2019年から始まった高校対抗eスポーツ全国大会「STAGE:0(ステージゼロ)」では、「LoL」のほか「クラッシュロワイヤル」「Fortnite(フォートナイト)」の3タイトルを開催。2020年9月の第2回大会では、全国1779校、2158チーム、5555人ものエントリーを集め、配信視聴者数は前回の約136万人を大きく上回る747万人にも達して、まさに〝高校生eスポーツの祭典〟となりました。

「全国高校eスポーツ選手権」も、過去2回開催。2021年3月に決勝が行われる予定の第3回大会は、「LoL」で113校168チーム、「ロケットリーグ」は121校178チームがエントリー。それぞれ予選大会を経て、決勝4チームが決定しています。

いずれも新聞社や多くの企業がスポンサーとして参加したり、各地のeスポーツ連盟と共催するなどして各方面で大きな盛り上がりを見せています。

Q:オンラインゲームに抵抗のない若い世代だけでなく、野球やサッカーなどのプロスポーツ観戦に慣れ親しんだ世代の生活にも関わってくるものでしょうか?
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どの時代でも、若い世代の新しい娯楽は当初「好ましくないもの」として大人たちに疎まれたものです。それらが10年20年の間に成熟し、その時代を豊かに彩る文化・芸術として社会に浸透していったことは、歴史の事実として明らかです。

一昔前の漫画や小説、アニメやゲームといったものが、そうしたものになりつつあることを、わたしたち大人世代も実感しているはずです。

テレビゲーム黎明期を生きてきた40歳代以上の人は、eスポーツに関わる市場経済を担ってきた世代でもあり、現在のこの盛り上がりを仕掛けてきた世代とも言えるわけです。もはやeスポーツは、「一部の限られた人の娯楽」の域を大きく超えていると思います。

上の世代にとっても、経済・文化・医療・環境、そのほか生活を取り巻くさまざまな分野で進むIT化、グローバル化の流れのひとつとして、eスポーツを捉えないわけにはいかないでしょう。

間違ってもeスポーツが世代間格差のフィールドになることはないと思っています。

Q:プロeスポーツプレイヤーは子どもの憧れの職業として上位にランクインしています。eスポーツは将来的にどのような位置づけとなるのでしょうか?
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eスポーツには、我々の「WE-R1(ウイーアーワン)」のようなプロチームもあり、プレイヤーだけでなく、関連するさまざまな技術や能力が求められています。ただ現在のところ、確立した職業として安定的に収入を得られるというものではなく、社会的認知度や評価も高いものではありません。このことは今後の課題の一つでしょう。

eスポーツが、これまでにない勢いで今後の社会に浸透していくことは間違いありません。

その大きな流れはすでに始まっていて、スポーツ団体や民間企業だけでなく、自治体、環境団体、学校、医療機関、国際機関などさまざまな分野で、将来のビジョンを構築したり連携したりする際、無視できないコンテンツとなっています。

年齢や障がい、住んでいる地域や人種、使用する言語に関係なく、誰もが参加できるeスポーツ。健康や医療、福祉、教育への活用のほか、大会などの開催による経済効果と地域活性化には各方面が注目。またeスポーツを通じたICTの強化、国際交流・外国語学習、産学・官民連携、世界規模のSDGsの取り組みにも期待が高まります。

文科省では小中学生1人1台パソコンを配布したり、デジタル教科書の使用制限撤廃が検討されるなど、教育の現場でも慌ただしくIT化が進められています。

こうした環境に慣れ親しんだ子どもたちが、仲間と連携しながら、差別なく公平に世界と戦えるフィールドを通じて、新しい文化を育てていくものと思っています。

寺本俊孝

eスポーツ事業におけるサポートを行う専門家

司法書士

寺本俊孝さん(WE-R1株式会社)

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