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「私の家政夫ナギサさん」で注目される母娘問題。キャリア女性が母親との関係を見直し、自分らしく生きる方法とは?

カテゴリ:
メンタル・カウンセリング
キーワード:
対人関係療法

娘の幸せを願うがゆえの母親の言動が、娘にとっては重荷に―。いわゆる〝毒親〟とまではいかなくとも「母親といると何だか疲れる」という女性は少なくありません。連続ドラマ「私の家政夫ナギサさん」(TBS系・毎週火曜放送)で注目されたのも、主人公・メイと母親との関係性です。「やればできる子」と言われ続け、母親の期待を一身に背負って育ったメイ。バリバリ働くようになったら、「仕事と家事が両立できる子になって」と、苦手を克服するように求められます。

そんな母親に代わり、ありのままのメイを受け止め、励ましてくれる家政夫のナギサさん。メイの姿に自分を重ね「できない自分も認めてほしかった」と、自身の本心に気付いた女性もいるようです。大人になった娘が母親との関係を見つめ直し、自分らしく生きる方法とは? 女性を応援する生き方・働き方カウンセラーの鵜飼柔美さんに聞きました。

自分の分身のように「わかってくれる」という期待が、愛情のすれ違いを生む原因に。大人の母娘は「濃すぎる関係を薄くする」くらいでちょうどいい

Q: メイの母親は、自分ができなかった仕事や家事スキルの向上を娘に望み、「やればできる子」と伝え、鼓舞し続けました。一方で、メイはこれを〝呪いの言葉〟と捉えていました。なぜ〝呪い〟と感じてしまったのでしょう。
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「やればできる」という言葉には、「励みになる」「負担になる」両方の側面があったと思います。
少なくとも「あなたは何をやってもダメ」と言われるより、自分を信頼してくれていることは伝わります。メイが仕事で発揮する、ここぞというときの粘り強さは、母親の言葉が生きているのでしょう。

問題は、苦手なことも「やればできる」と言われたこと。完全無欠であることを求められ、逃げ道がないように思わせてしまったのです。

メイが「仕事ができない私なんて価値がない」というシーンがあります。これは、母親の言葉を「できる」「できない」が全てと捉え、「自分は結果だけを期待されている」と受け止めてしまった可能性があります。母親にそんなつもりはなく、いわば愛情のすれ違いです。

自己肯定感を育む上では、結果だけでなく、自分がどのようにがんばったか、プロセスを理解することが大切です。母親が「できる」という言葉に加えて「あなたはこういう風にがんばった」「こういうがんばり方をするからこれができる」など、本人らしさを伝えていれば、〝呪いの言葉〟にはならなかったかもしれません。

Q:母親にとって娘の存在とは? なぜ、これほど期待を寄せてしまうのでしょう。
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母親から見て息子や夫は、異性だという〝あきらめ〟があります。一方、娘に対しては、いわば同じメス同士、同類のような感覚がある。特に長女は、母親にとって最初の同性の子どもであるため、女性としての自分を投影し、期待を寄せてしまいがちです。

ドラマでは、メイの妹は大学を中退し、姉より先に実家を出て行きました。現実の世界でも、自分が兄弟姉妹の中で〝最後の砦〟になってしまい、その分まで「お母さんを悲しませてはいけない」というプレッシャーを感じて、がんばってしまう長女は少なくありません。

メイの妹は、母親と音信不通という形をとりました。こちらは一見、母親に縛られなかった娘に見えますが、堂々と対決できなかったのは「母親の期待に応えられなかった」という罪悪感があったと考えられます。母親にとって娘が特別であるように、娘もやっぱり母親のことを思わずにはいられないのです。

Q:娘が母親の言葉をネガティブに受け止めるのに対し、母親は「そんなつもりで言ってない」ということがあります。こうしたすれ違いが起こる原因は?
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母親が、子どもがどう捉えるかより、自分の言いたいことを優先してしまうのは、近すぎる関係性ゆえの甘えです。一方、悪いように受けとる娘も、自己肯定感の低さなどが影響し、母親だったらもっと自分を理解し、ほめてほしいと思っている。

母親は「いい意味にとってほしい」、娘は「いいように言ってほしい」。身内だからこそ、お互いに「わかるだろう」という期待が強すぎるのです。

たとえ親子でも、生きた時代や価値観は全く違います。「母親だからわかってくれる」「娘だからわかってくれる」という期待は捨てた方がラクになります。「お母さんと違って私は感受性が豊かだから」などと伝えていくうちに、お互いの違いに気付き、すれ違いが緩和されるかもしれません。

大人になった娘と母親は、親子というより、いわば人生の先輩と後輩です。濃すぎる関係を薄くするくらいで、ちょうどいいのです。

Q:大人になってから、何かのきっかけで、母親の〝呪いの言葉〟が解けることもあるのでしょうか。
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母親以外の人、例えば友人や上司、同僚などと新たな人間関係を築いていく中で、自分の持ち味が認められ、ありのままの自分を受け入れてもらったとき、母親の言葉や価値観が全てではないことに気付くでしょう。

メイの場合も、ナギサさんが彼女の努力する姿勢を理解し、プロセスを認めてくれたことで呪いが解けました。ある意味〝呪いの言葉〟に縛られて、逃げずに努力してきたことが職場でも評価され、自分の持ち味だと認識してポジティブに変換できたのです。

Q:メイの母親は結婚後、自分の意に反して専業主婦になっています。母親が子どもに無理な期待をかけてしまうのは、母親自身が抱える問題も影響しているのでしょうか。
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女性が働く環境は、この30年で大きく変わりました。当時は「寿退社、女の花道」といわれた時代。母親神話も根強く、子どものものは母親の手製が当たり前。メイの母親のように、専業主婦で家事が苦手であれば、相当肩身の狭い思いをしたはずです。

自身のコンプレックスやキャリアへの未練から、娘に同じ苦労をさせまいと忠告を繰り返したことが、意図せず娘の負担になってしまった。ただ、これは母親1人の問題だけでなく、家事も育児も女性に完璧を求め過ぎた、日本の社会問題を投影しているともいえます。

子どものためには、母親自身も自分をおろそかにせず、ありのままの自分を受容することが大切です。

メイが幼少期に「大きくなったらお母さんになりたい」と言ったとき、母親は「くだらないことを言わないで」と、娘の夢を切り捨てました。ですが、もし「どうしてお母さんになりたいの?」と尋ねていたらどうだったでしょう。「お母さんはとっても優しいから」と、娘は言ってくれたかもしれません。

自分はこんな時代に家事ができないダメな母。でも、そんな自分を娘は無条件に愛してくれる。そのことに気付いていれば、母親も自らの〝呪い〟から解放されたかもしれません。

Q:「いい娘、いい社員でいるためにがんばりすぎてしまう」という女性は多いです。自分らしく生きるために必要な考え方とは?
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いい娘、いい社員でいようと努めるのは、社会性が高いからであり、決して悪いことではありません。

問題は、自分の気持ちを無視して、家族や組織に尽くし過ぎていないかどうか。「誰のために、いい娘、いい社員でいるのか」「それを私自身が願っているのか」を、自分に問いかけてほしいのです。

そのためには、常に「私」を主語に考えること。同じ行動でも、主体的か否かで、ストレスのかかり方が違います。

例えば、母親への連絡は「お母さんが寂しがっているだろうから」と、期待に応えようとするのではなく「私がしたいときにする」。次第に話さないことに慣れ、親の期待感も薄れてきます。母親が「いつまでも娘をあてにできない」と認識することは、母親自身のセカンドキャリアを考える、いいきっかけにもなります。

「私がいないとお母さんが困る」と思うかもしれません。ですが、母親には、老いを認めたくないために「まだ子どもには頼らない」という思いも残っているものです。「何かあったら言ってね」と声をかけておき、あとはマインドの部分で通じ合っていればいいのです。

自分の行動に主体性を持つと「自分らしさ」が発揮できます。そして、自分のアイデンティティーが確立すると、同じように自立したパートナーと出会い、お互いに自分らしく、いいパートナーシップを築くことができます。

母親や他者の望みに沿って生きる必要はありません。自分の人生のハンドルは、自分で握りましょう。あなただけの道は必ず切り開かれます。

自分らしく生きたい女性を応援する生き方・働き方カウンセラー

鵜飼柔美さん(オフィスファーロ)

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