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日本版司法取引がまもなく開始。制度の問題点や懸念事項は?!

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日本ではあまり馴染みのない「司法取引」、日本でも6月からスタート

こんにちは。河野です。みなさん、『司法取引』という言葉を聞いたことがあるでしょうか?警察や弁護士などが活躍するアメリカのドラマなんかを見ていると、たまに出てくる言葉で、ご存知の方もいると思います。

司法取引とは、簡単に言うと、犯罪の容疑がかけられている人が罪を認めたり、共犯者についての話をするといった捜査協力、公判協力をすることの見返りとして、捜査機関から自己の容疑についての処分を軽くすることなどを約束してもらえる制度です。

なんと、こういった司法取引が何と今年の6月1日から日本でも採用されることになっています。アメリカのドラマで見るような司法取引とは多少の違いはありますが、「捜査協力することで見返りが約束される」という意味では同じです。

個人的には、まさか日本でこういう制度が始まることなど考えられないと思っていましたが、事実として2か月後には実際に始まるのですから、弁護士としてもこの制度についてきちんと対応しなければいけません。日本各地でこの司法取引をテーマとした研修会が開催されています。

司法取引制度の懸念は「冤罪を生み出してしまう可能性」

さて、この日本版司法取引ですが、一部新聞等でも報道されている通り、懸念されていることがあります。そう。冤罪を生む可能性があるということです。

例えば、振り込め詐欺の事件で、捜査機関がトップの黒幕(部下らに指示を出して私腹を肥やしている者)に目星がついているとします。実行犯(仮に、「A」としましょう。)とともに、黒幕(仮に、「B」としましょう。)が逮捕され、取調べが行われましたが、Bは一切何もしゃべらず、Aはなかなか具体的な犯行内容や組織の全貌については自供しません。

そんな場合に、捜査機関がAに対して、具体的な犯行の内容、組織運営の内容、黒幕の関与等につき認めて喋ったら刑を軽くしてやる(例えば、執行猶予がつく求刑にしてやる等。)と言って、Aに供述を求めることが考えられます。

そこで、Aが全てを知っていて正直に話をする分には正常な司法取引が成立します。しかし、Aがそこまで詳しい事情を知らず、教えたくても教えられない場合もありえます。Aとしては、自分の刑を軽くしたい一心で、捜査機関にとって都合の良い話をしてしまう可能性は否定できません。

例えば、実際はそういうことはなかったのに、「自分の直近の上役のCさんがBと打ち合わせをして犯行の計画を決めていました。」といったように、Bを共犯者として検挙できるような虚偽の供述をしてしまうというケースです。実はBは犯行には全然関与しておらず、別のDという者が真の黒幕でしたという場合、これは冤罪になります。

司法取引の結果、不公平な量刑になる結果もありえる

あと、弁護人の立場からは、こういう発想もあります。複数名の組織的な犯罪があったとして、AとBが逮捕されたケースでご紹介します。AとBは同じような立場、同じようなレベルの悪さという前提です。

Aは自分の行為を反省して、自分の知る限りの情報を自供し、C、D、Eの関与についても正直に話したとします。Bは一切何も話しません。捜査機関は、捜査結果から、Fの関与も疑っており、それなりの証拠も持っていて、この話についてAは知らず、Bが知っているとあたりを付けているとします。

そこで、捜査機関はBに司法取引を持ちかけました。Bは自分が懲役3年くらいで済みそうならそれに乗ろうと考え、司法取引に応じてFについての供述をしました。結果、司法取引をせずに自供したAが懲役4年、司法取引をしたBが懲役3年という結果になった場合、ものすごく不公平な結果になると思いませんか?

元々、同じような悪さなのに、正直にすべて話をしたAより、たまたま捜査機関にとって都合のいい情報を知っていたBの方が軽い刑になるという現象が起きないとは言い切れません。

もちろん、ことはこんなに単純ではないでしょうし、冤罪や理不尽な結果にならないように、検察官も弁護人も対応するよう努めることとは思いますが、いかんせん新しい制度ですので、検察官、弁護士はもちろん、世間からもこの制度がうまく運用されているかご注目いただければと思います。

河野晃

自然体で気軽に相談できる法律のプロ

弁護士

河野晃さん(水田法律事務所)

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