女性専用車両は男性差別?違法な差別と言えるのか
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男性が女性専用車両へ乗り込み、列車が遅延
地下鉄で男性が女性専用車両に乗り込んでトラブルとなり、列車が遅延したとの事件がありました。当該男性は女性専用車両が男性差別であると主張する団体のメンバーとの報道もあります。女性専用車両は違法な男性差別と言えるのでしょうか。
女性専用車両の性質・目的をあらためて確認
まず、女性専用車両とはどのようなもので、どのような目的の下設けられたものかを確認したいと思います。
東京メトロのホームページでは、女性専用車両について「朝の通勤・通学ラッシュ時間帯に女性のお客様・小学生以下のお客様等に安心してご乗車いただくことを目的」とするとしています。
また、「女性専用」という表記ですが女性以外でも「小学生以下のお客様、体の不自由なお客様とその介助者もご乗車いただけます」とされています。他の鉄道会社の規定も概ね同様であると思われます。
女性専用車両は電車内での痴漢等の犯罪行為や迷惑行為から女性乗客を守るために設置されたとされており、その後大都市圏を中心に普及が進んでいます。
国土交通省は男性の乗車を法的に禁止するものではないという見解
国土交通省は女性専用車両を「鉄道事業者において、輸送サービスの一環として導入された女性等に配慮した鉄道車両」と定義し、あくまでも乗客の任意の協力を前提とするもので男性の乗車を法的に禁止するものではない、との見解を示しています。
女性専用車両は憲法上の「差別」的な取り扱いと言えるのか?
では、このような女性専用車両を設けることは「差別」となるのでしょうか。
憲法は14条において「法の下の平等」を定めており、性別等で不利益な取り扱いを受けないことを明らかにしています。もっとも、憲法の規定は「公権力との関係で差別されない」ことであり私人間には直接適用されません。私人間の問題については民法等の解釈にあたって間接的に憲法の理念が考慮され、違法かどうかが判断されることになります。
また、性別を理由にした一切の異なる取り扱いが許されない、という訳ではありません。「違法な差別」といえるかどうかは、異なる取り扱いをする目的やそれによって生じる不利益の程度などから判断することが一般的です。
平成23年の裁判では女性専用車両は問題ないとの判決
女性専用車両が違法な差別かどうかについては裁判例があります。東京地裁平成23年7月12日判決では、女性専用車両に反対する団体の男性4名が事前に通告したうえで女性専用車両に乗車したところ、鉄道会社から乗車しないよう説得を受けたが不調となり、鉄道警察隊や警備員が男性らとともに女性専用車両に乗車したという事案において、男性側の女性専用車両は憲法違反であり違法であるとの主張について判断をしています。
判決では、女性専用車両を設置することは鉄道会社の裁量に属することを前提に、女性専用車両を設置した目的は正当であり、また平日の一部の車両にのみ設置するもので、男性乗客の鉄道利用を困難にするものではないこと等を理由に、男性側の請求をすべて排斥しています。
「女性専用」という名称も鉄道会社の裁量権の範囲内とされた
女性専用車両に反対する立場からは、女性専用車両の設置目的には一定の理解を示しつつも、女性以外の乗車を法的に禁止するものではないのに「専用」という名称をつけることは不当であって、女性専用車両に乗車した(せざるを得なかった)男性が不当な偏見を持って見られることが問題である、との主張があります。
確かに、前述の東京メトロの説明や国土交通省の見解からは、女性専用車両に女性以外の乗車ができないわけではなく、「専用」と表記するのは疑問であるとの意見も一定理解できます。
しかし、前述の東京地裁判決ではこの点について「不特定多数の乗客に女性専用車両の存在を周知させるためには、あえて健常な男性も乗車できる旨を明記せず『女性専用車両』と表記することも裁量権の範囲内である」としています。
女性専用車両の設置目的からすると、このような表示もやむを得ないとするものですが、この点は今後女性専用車両が広く普及していく中で変わっていくかもしれません。
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