成人式・業者トラブル問題。振り袖を着られなかった被害者は法的に何ができるのか?
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成人式に振袖が用意されていない事態が発生
2018年早々に世間の話題をさらった振袖販売業者「はれのひ」。成人式の日に起きた騒動から2週間以上が経過し、ようやく社長が公の場に姿を現しました。
会見でも社長自らが述べていたように、一生に一度の舞台である成人式において、振袖をきれなかった新成人の怒りや悲しみは想像に難くないことです。
債務不履行に基づく損害賠償や契約解除が考えられる
振袖の代金やレンタル料を支払いながらも、成人式当日に振袖が用意されていないことから、当然、会社には損害賠償責任が生じます。
これは、振袖の売買なり、レンタル(賃貸借)なりの契約が当事者と会社との間に成立しており、顧客側はすでに契約上の債務である代金の支払いを済ませていますので、会社が商品を用意しないということは一方的に会社が自己の債務を履行していない状態、つまり債務不履行状態に陥っているということになります。
振袖を買ったという人からすると、履行期(振袖を用意すべき日)に振袖が用意されていない以上、契約自体を解除して、「支払った代金を返せ!」と言うことも理論上は可能です。
しかし、そういった対応をされる方はこの事件ではいないかもしれません。それは、はれのひという会社にお金がないことが明らかですので、金を返せと言ったところで返ってこないからです。
はれのひの破産管財人は、代金全額を支払った方に対しては、会社で保管している晴れ着を発送するという対応をするようです。返ってこないであろう現金に期待するよりは、現物(晴れ着)を受け取る方がましといえるかもしれません。
ただ、代金を一部しか支払っていない方やレンタルの方については、こういった現物を支給するという方法も取れません。非常に残念ですが、泣き寝入りとなってしまう可能性が高いといえます。
商品を提供する意思があるとすれば詐欺にはならない
こういう具合に、会社の経営状態が悪化しているにもかかわらず、事業を継続し、結果として顧客にお金を支払わせておきながらその対価となる現物などの提供ができない場合に、「詐欺ではないか」という疑惑が生じます。
てるみくらぶの事件の際にも、そういった声がありましたが、結局こういった理由(お金を支払わせておきながらサービスの提供ができなかった)では詐欺として立件されておりません。
紛らわしいですが、てるみくらぶの社長が詐欺罪で立件されたのは、「返せる当てもないのに虚偽の資料を用いて銀行に対して『返せる』と騙し、融資を受けた」という意味での詐欺罪です。
これらの違いは、簡単に説明すると、「お金を支払わせる段階で、相手(顧客)を騙す(商品の提供をしない、出来ないことがわかっていた)意図があったかどうか」により左右します。詐欺罪は、あくまでも「騙す」という意図が必要な犯罪です。
実際に法的な対応を採る手段は多くはないのが実情
このような問題に直面したとき、法律家として出来ることは非常に少ないと気づかされます。
もちろん、こういった被害を受けた方から相談を受けた場合、法的な部分については丁寧に説明し理解していただくよう努力し、少しでも元気になってもらいたいという思いで気の利いた言葉でもかけられればよいですが、無力感に苛まされます。
こういう状況の中、他の振袖業者さんなどが、可能な範囲で救済措置を行っているという話題をみると、すごいなと感嘆すると同時に、羨ましい気持ちになります。
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